映画『ヒメアノール』で狂気の殺人鬼を演じ、V6ファンだけでなく映画ファンも震撼させた森田剛。彼の演技力は、数々の舞台での活躍で業界では有名だったが、その演技力が今回の映画『ヒメアノール』は決定づけたといってもいいだろう。

しかし、彼は前から演技力に定評があったわけではないし、アイドルとしても優等生だったわけではない。どちらかといえばジャニーズアイドルの中でもアウトロー路線を行く存在だったのだ。
では、森田剛の足跡を追ってみよう。

ジャニーズJr.時代は三宅健とともにダントツの人気アイドル


1993年にジャニーズ事務所に入り、1995年にV6としてデビュー。入所からデビューまで2年というのはラッキーだ。それはジャニーズJr.時代から森田剛は三宅健とともに2大スターだったことも関係しているかもしれない。
圧倒的な人気を誇っていたことに加え、森田がダンスのセンスが抜群に良かった。
ジュニアでもダンスの見本のような存在だったことから、彼がデビューすることに驚きはなかったのだ。

ジャニーズアイドルの中でも珍しい「陰の系譜」を継ぐ者


「MUSIC FOR THE PEOPLE」でデビューしたV6は、ほかのジャニーズアイドルと同じようにアイドル雑誌の表紙を飾り、インタビューもこなし、バラエティにも出演。人気はうなぎ昇りだった。特に森田はV6の中でも年少で構成されたComing Centuryとしての活動も活発。
しかし、当時から森田にはちょっと陰があり、インタビューでも言葉は少なく、どちらかといえばインタビュアー泣かせの無口なアイドルだった。ジャニーズは、キラキラした笑顔のザ・アイドルが多いが、ときどき豊川誕のような陰あるアイドルが存在する。森田は完全にその系譜だろう。


とはいえ、森田はひねくれているわけではなく、正直なだけなのだ。おかしくないのに笑えないし、そもそもおしゃべりではないからインタビューも苦手、よく知りもしない人相手にお愛想なんてできない。同グループの井ノ原快彦は話術で人をひきつけていくが、それとは対極にあるタイプだと言えるだろう。

演技力を評価された森田剛


森田は数々のドラマに出演しているし、Coming Centuryとして映画にも出演しているが、特に演技力に言及されることはなかった。おそらく当時、本人も演じることに情熱を傾けるほどのめりこんでいなかったのかもしれない。
90年代は森田=ダンスのイメージの方が強いし、演技力で頭角を現していたのは岡田准一の方である。

しかし、劇団☆新感線の舞台『荒神〜AraJinn〜』で主演を務めて、次々と舞台出演を続けていくうちに「森田はすごい」という声が業界で広まっていく。

蜷川幸雄、宮本亜門らの演劇界の重鎮からの愛され、舞台出演を重ねていくうちに、共演者からも絶賛の声が相次ぎ、ジャニーズファンではない演劇ファンも魅了する存在になっていった。

V6で歌って踊る森田剛のミョーな違和感


森田剛のことだから、演劇界でオファーが数多く来る理由に、演出家との交流や演劇仲間を増やそうとしたわけではないだろう。すべては彼の実力でもぎとった舞台であり、だからこそ「その演技を見たい」と人は集まり、今の地位が確立されたのだ。

岡田准一はソロ活動をしてもまだV6のイメージがある。嵐で一番の演技派といわれる二宮和也さえソロ活動をしても嵐のイメージはある。
でも、芝居をしている森田にはV6のイメージがない。
逆にV6で歌って踊っているのを見ると「なんか違和感……」と感じてしまうほどだ。
そこが、ジャニーズらしくないジャニーズと感じさせるところではないか。

これからもジャニーズらしくない役者道を邁進してほしい。そういうジャニーズアイドルがひとりいたっていいじゃないか。事務所もアイドル界の変わり種として、森田剛を自由に泳がせてほしいと願ってやまない。
(れおなるど)

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