現在、『ウルトラマンオーブ』が絶賛放送中のウルトラマンシリーズは、今年がシリーズ放送開始50周年イヤー。「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」としてギネス世界記録を更新中と、まさに世界に誇る日本特撮界の巨人だ。

もう一方の雄、仮面ライダーも忘れてはならない。こちらは、今年でシリーズ開始から45周年。この秋には、平成仮面ライダーシリーズとしては18作目となる『仮面ライダーエグゼイド』もスタート。斬新なビジュアルや設定で、日々話題を振りまいている。

世界の平和を守る目的は同じであっても、その世界観はまったく異なる2つのシリーズだが、たった一度だけ夢の共演をしたことがあった。その奇跡のコラボを振り返りたい。


直接対決はしていない!?『ウルトラマンVS仮面ライダー』


ウルトラマンと仮面ライダー、日本特撮界の両巨頭の夢コラボが実現したのは、『スーパーバトル ウルトラマンVS仮面ライダー』という、1993年7月発売のオリジナルビデオ作品の中において。登場するのは、初代ウルトラマンと仮面ライダー1号。元祖同士のクロスオーバーである。

夢の対決をあおっているタイトルであるが、実際は「東映まんがまつり」の『マジンガーZ対デビルマン』よろしく直接対決はしておらず、あくまで共闘に留まるのみ。一応、冒頭に演武的な対決のイメージ映像(?)は流れているので、それだけでオッサン世代は感涙であるが……。

当時の両シリーズが置かれていた状況


この当時は、両作品ともテレビシリーズ休止中。しかし、「Vシネマ」ブームに乗る形で、オリジナルビデオ作品を発表していた。
ウルトラマンは80年の『ウルトラマン80』を最後にテレビシリーズがストップしていたが、オーストラリアとの合作『ウルトラマンG(グレート)』を皮切りに新たな展開を模索していた時期。

仮面ライダーは89年終了の『仮面ライダーBLACK RX』以来、3年振りとなる新作『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)を発表。グロ描写多めの大人向け作品として、新機軸を打ち出していた。

歴史的偉業達成の背景とは


ファミコンスーパーファミコンなどゲームの世界でのコラボは、SD(スーパーディフォルメ)化というフィルターを通じてすでに実現していたのだが、同じ映像の中で共演することは円谷プロと東映の権利関係の問題等もあり、不可能と思われていた。
しかし、再発売およびテレビ放送をしない条件を付け(後に撤回)、さらに両シリーズ歴代作品の名場面を紹介した映像を加える形で同意したと言われている。要は両シリーズのプロモーション企画としてビデオ作品を成立させたのである。
そして目玉となったのが、初代ウルトラマンと仮面ライダー1号が共演する完全新作の短編ドラマなのだ。

まさかの展開! 仮面ライダー1号が巨大化!


短編ドラマのストーリーは、こんな感じだ。

ショッカーの怪人と怪獣が同時に街を急襲。そこに駆けつけた仮面ライダーとウルトラマン、それぞれがvs怪人、vs怪獣でタイマン勝負を挑む。劣勢になった怪人と怪獣が合体し、より凶暴な怪獣に変身。苦戦するウルトラマンを前に、仮面ライダーが巨大化。スペシウム光線とライダーキックの合体技で、見事に怪獣を倒す。
タイマンバトルが明らかに別撮りだったり、怪獣・怪人の合体も、仮面ライダーの巨大化も唐突だったり、そもそも仮面ライダーの巨大化自体がアリなのか? と、細かい不満を上げればキリがないが、エンターテインメント作品としての満足度は高いに違いないのである。


この夢コラボがきっかけとなり、翌94年公開の映画『仮面ライダーJ』では、歴代ライダー史上唯一の巨大化できる設定が売りとなる。ちなみに、その身長40mは初代ウルトラマンと同サイズであった。
現在に続く、仮面ライダーシリーズの「何でもあり」路線は、このコラボが原点だろうか? そう意味でも、特撮史に燦然と輝く栄光の作品だ。
(バーグマン田形)

※イメージ画像はamazonよりウルトラマンVS仮面ライダー