日本における緑茶飲料業界のパイオニアは伊藤園である。
1989年2月に発売された『お~いお茶』は、親しみやすいネーミングで緑茶飲料の存在を広く知らしめ、さらにペットボトル化することで、あらゆるシーンで緑茶を楽しめる文化を確立させた。
現在の主流である500mlサイズのペットボトル緑茶飲料が登場したのは96年のこと。意外と最近なのである。

『お~いお茶』の独壇場だった緑茶飲料市場に新しい風が吹いたのが2000年3月。ある商品が爆発的な人気を集めることになる。
それがキリンビバレッジの『生茶』。松嶋菜々子のCMをご記憶の方も多いのではないだろうか?

好感度No.1女優!松嶋菜々子が牽引した『生茶』ブーム


第1弾のCMでは、松嶋菜々子が「お茶にも生があったんだ」とそっとひと言。シンプルなメッセージで、生茶葉を使った商品特性&商品名をわかりやすくアピールした。

当時は主演ドラマがすべて大ヒットの人気絶頂期。「きれいなおねえさんは、好きですか。」でお馴染みのナショナル(現パナソニック)の美容家電商品のCMも大きな話題となり、好感度No.1女優にも選ばれていた頃だ。

まさに時代を代表する美人女優の宣伝効果は絶大で、豊富なCMバリエーションとともに『お~いお茶』のターゲットになかった若い女性層の取り込みに成功していく。さらに、高倉健も追加起用で高齢層も獲得。
その結果、00年末までの販売目標800万ケースに対して2,250万ケースと、驚異の売り上げを達成。緑茶飲料の販売量は、前年比400%以上の伸び率という大記録となった。


実は2000年から『お~いお茶』のCMを務める市川海老蔵


迎え討つ伊藤園『お~いお茶』は、95年から中谷美紀をCMキャラクターに起用中だったが、00年からは歌舞伎界の若きホープも投入し、盛り上がって来た緑茶飲料業界に新風を巻き起こすことになる。市川新之助、現在の市川海老蔵である。
歌舞伎と緑茶、それぞれが日本の伝統を背負うものとしてのイメージを重ね、製品の「本物」の品質を強調していく狙いがあったという。

さらに伊藤園は日本初となるホット対応のペットボトル緑茶飲料を開発。00年10月からは、あったかい『お~いお茶』も登場し、老舗の意地を見せつけた。
海老蔵は、暴行事件でのブランクはあったとはいえ、現在もCMキャラクターを務めており、中谷美紀に至っては20年以上に渡って起用中。このブレない姿勢からも、伊藤園の本物志向を感じずにはいられない。


覚えてる?内山理名の『旨茶』、織田裕二の『まろ茶』


『生茶』の記録的大ヒットを受け、各社が緑茶飲料市場に参入したのは01年3月のこと。
アサヒ飲料は『旨茶』を発売。緑茶から渋さ・苦さを取り除き、うまみ成分だけを抽出したエキスを使用したのが特徴であり、CMキャラクターには内山理名を起用している。中々渋い人選だ。お茶は渋くないけど。

日本コカ・コーラは『まろ茶』を発売。「かぶせ茶」を使用し、ほのかな甘さ・まろやかさを売りにした。
当初のCMキャラクターは織田裕二で、『まろ茶』を味わった織田が「まろ~ん」とひと言で締める内容だったが、目薬『サンテFX』のCMでの「キター!」のイメージや『世界陸上』キャスターのハイテンションぶりもあり、癒し感は薄かったか?
遅れて、当時「癒し系アイドル」の代表になっていた井川遥が加わったのは懸命な判断かも知れない。

生茶パンダの人気を追い抜いた『伊右衛門』の快進撃


絶好調の『生茶』は、03年からCMに登場したパンダのパペットがさらなる追い風に。「生茶パンダ」と名付けられたマスコットは、ノベルティやグッズでも大ブームとなったのだ。
『お~いお茶』と『生茶』の2強時代が続くかと思われた矢先、大型ルーキーが登場となる。

04年3月発売、京都の歴史ある製茶企業・福寿園とのコラボで誕生したサントリーの『伊右衛門』だ。
福寿園の茶匠が厳選した茶葉だけを使用したプレミアム感を時代は支持。
本木雅弘と宮沢りえが夫婦役で共演するCMでは、仕事に打ち込む亭主とそれを支える妻のドラマで、同世代のビジネスマンの共感を呼んだ。さらに、セブンイレブンとのタイアップにより、コンビニ市場のシェアをほぼ独占。結果、初年度から『生茶』の販売記録を抜くほどのメガヒットとなっている。

現在は、『お~いお茶』『伊右衛門』『生茶』に、07年発売の日本コカ・コーラ『綾鷹』を交えた4種が、緑茶飲料四天王的存在だ。
あなたのお気に入りはどのブランドですか?
(バーグマン田形)

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