最近よく「映画史に残るラストシーン」という宣伝を見る。本当かよ……と突っ込みたくなる乱発ぶりだが、本当に映画史に残るラストといえば、やはりあの1本だろう。
99年作品の『DEAD OR ALIVE 犯罪者』である。

全盛期の竹内力と哀川翔が共演した日本映画史に残る伝説の1本だが、公開当時に大阪ディープゾーンとして知られる新世界国際劇場に本作を観に行ったら、お世辞にも綺麗とは言えない劇場内は意外にも女性客の方が多かった。邦画冬の時代にもかかわらず、公開前からあらゆる雑誌で「衝撃のラスト!」と絶賛されていたからだ。

90年代末、情報収集の方法といえば、まだPCやスマホより雑誌や新聞が主流だった。NTTドコモでiモードのサービスが開始されたのが99年2月(イメージキャラクターは広末涼子)、内蔵型カメラ付き携帯がJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル)から発売されたのが翌00年11月のことである。

「Vシネマオールスター」豪華キャストが集結


ちなみに、映画界に大きな影響を与えたプレイステーション2の発売は00年3月4日だ。ゲーム機と同時に「DVDプレーヤー」目当てで購入する人が多かったメディア革命。
プレステ2の発売は一般家庭に爆発的にDVDが普及するきっかけとなる。ありがとうビデオテープ、さらばVHS。
そんな空気が充満する中、公開されたのが、Vシネは永久に不滅です宣言『DEAD OR ALIVE 犯罪者』だったというわけだ。

監督は三池崇史、ダブル主演に竹内力と哀川翔という、当時全員30代の現役バリバリで「Vシネマオールスター」と言われた豪華キャストが集結。80年代後半から制作が始まった時代の落とし子Vシネマ。この「Vシネマ」という名前は東映が商標登録しているが、一般的には松竹、東宝、日活、大映作品すべて含めた劇場公開なしのレンタルビデオ専門ソフトの総称として使われている。
基本的に男性向けのバイオレンスとエロが満載の内容で、映画よりも低予算、短期間で一気に撮る。
そこで叩き上げのキャリアをスタートさせたのが三池監督であり、90年代に主演作品を連発して「Vシネマの帝王」と人気を博していたのが竹内力と哀川翔の二大スターである。

『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のストーリー


『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のストーリーは「新宿署の刑事・城島(哀川翔)が、新宿の街で暴れる中国人マフィアグループリーダーで中国残留孤児3世の龍(竹内力)を追う」というVシネ感全開のシンプルなもの。脇役で小沢仁志、石橋蓮司、寺島進、ダンカンといったのちの邦画バイプレーヤーたちも集結。
99年当時の新宿の街でロケをしているが、懐かしのコマ劇場前の様子や、まだ駅の改札では誰もSuicaを使っていないところに時代を感じさせる。

武闘派刑事の城島には今すぐ手術が必要な1人娘、同じく無敵の龍にはひ弱な弟がいる設定。この手のありふれたB級感満載のサイドストーリーも、三池は細かいことはどうでもいいぜ的な演出と圧倒的なスピード感で振り切り、時に自ら予定調和を破壊して物語は一気にクライマックスへ。


映画史に残る衝撃のラスト


そして、映画開始1時間34分過ぎからのラストシーンをネタバレ上等で書くと、荒野で城島と龍はそれぞれ車に乗り込み最終決戦へ。向き合った1本道を互いに猛スピードで突っ走り、龍側の車が激突寸前で回避すると転倒。そこに再び城島車が爆走して突っ込む、と思ったら龍の子分が手榴弾片手に特攻。派手に爆死炎上して宙を舞う城島の車。粉々に飛び散る龍の子分。するとボロボロの車から這い出た城島は負傷した自らの左手をもぎ取るド根性。
まるで『ドラゴンボール』のピッコロ大魔王である。
そして、ついに2人きりのタイマン勝負になった哀川翔と竹内力はお互いに向けて銃を乱射。それでも決着が着かず、哀川は自らの背中から唐突にバズーカ砲を取り出し、竹内は己の心臓から元気玉を抉り取るとそれを投げつける。果たして、この地球最強決定戦の結末は?

凄い。もはや文字起こしをしたところでほとんど意味不明だ。現代なら炎上必至、無茶苦茶にして爽快。
ぜひこのガチで映画史に残るラストシーンは本作を観て体験してもらいたい。
なお『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のDVDジャケットの裏にはこんなコピーが書かれている。

「フツーに生きたいなら、このクライマックスは知らない方がいい。」


『DEAD OR ALIVE 犯罪者』
公開日:1999年11月27日
監督:三池崇史 出演:竹内力、哀川翔、小沢仁志、石橋蓮司、寺島進
キネマ懺悔ポイント:53点(100点満点)
99年当時の邦画界でヒットするのはジブリとポケモンのアニメ、さらにテレビドラマが元の『踊る大捜査線』という絶望的な状況。三池は劇中でその『踊る大捜査線』を軽く笑いのネタにしてみせる。まさにVシネマ界からのアンサーソング的な意地と怒りが詰まった渾身の一作だ。
(死亡遊戯)


※イメージ画像はamazonよりDEAD OR ALIVEデッド・オア・アライブ犯罪者