眉毛は顔の印象をもっとも大きく左右するパーツのひとつ。美を追求する女性にとって、トレンドの「眉毛」を取り入れることは時代の最先端をひた走るために欠かせない。


そんな眉毛の形は時代によってさまざま。過去100年の間でもっとも眉毛が細かった時代といえば、アムラーが社会を席巻した1990年代後半だ。なぜあそこまで“極細”の眉毛がトレンドとなったのだろうか?

2017年のブームは「太アーチ眉毛」

 
極細眉時代を振り返る前に、現在流行している眉毛の形状についておさらいしよう。

ここ数年間は、AKB48らアイドルが取り入れて話題となった「困り眉」(大島優子や島崎遥香、柏木由紀らのハの字に垂れた眉毛)や、ヘルシーでカジュアルなファッションがブームとなったことを受けたナチュラルな太眉(中村アン、長谷川潤など)がトレンドだった。

2017年半ばも太眉ブームは健在だが、平行のキリッとした眉毛から変わって、「アーチ」を描くような女性らしいフォルムが話題となっている。アーチ形といえば石原さとみが典型的。眉頭の太さを残しつつ、眉尻に向かってスッと細く収束していく様が女性らしさを表現してくれる。

柔らかくてエロい印象を演出したいという女性は、とにかくアーチ眉にすることから始めよう。

不況になった1990年代後半は極細だった


このように昨今のトレンドはナチュラル志向だが、過去には不自然なほどに細眉が流行した時期があった。
それが不況下の1990年代後半である。平野ノラがパロディしているように、80年代のバブル期は太眉・ボディコンが流行していたことはご存知のとおり。しかし、バブル崩壊によってトレンドが180度変わってしまった。

1990年代といえば、オウム真理教事件による社会不安、援助交際ブーム、ルーズソックの流行。そして後半になると、アムラー(安室奈美恵に憧れた女性)が渋谷の街に溢れかえった頃だ。

厚底ブーツを履き、メッシュ入りサラサラストレートヘアが目印の彼女たちは、小麦色に焼いた肌に極細アーチ眉毛を描いた。

「細い方がかっこいい」「太い眉毛はやぼったい」という、いわゆるギャルの常識はこの頃できあがる。今ではここまで細眉の女性を見ることもなくなった。

異様なまでに細い眉毛は、社会の不安定さを表していたのではないか……といえば勘ぐりすぎだろうか? 同じ頃あらわれた“コギャル”もまた、細眉にルーズソックス、短すぎるスカートで身を固めた。
その後現れたヤマンバ系のギャルたちは、メイクとファッションで自己防衛し、“異性”や“大人”の眼差しから身を守った。不況下で淀む日本社会の暗部を、そのド派手なファッションで覆い隠していたのかもしれない。


眉毛の太さは景気と関係している?


その後、空前の“あゆブーム”が到来し、若者は浜崎あゆみの白い肌を真似て美白志向へとシフトした。
盛りギャルや姫系、「小悪魔ageha」的なファッションのブームなど、女性らしさを表現するべく眉頭が太く、眉尻が細いアーチ眉が主流となったのだ。

不況の1990年代から緩やかに景気回復を遂げた日本社会では、眉毛が再び太さを取り戻していく。2010年代に入ってからも、細すぎず太すぎず、ナチュラルに太さを保った眉毛が主流であり続けている。

景気が回復すると眉毛が太くなり、不況になると眉毛が細くなる……。美容業界ではそんな風に語られることもあるが、その真偽はさておき、時代ごとの女性の生き様や立場を表現するシンボルとして眉毛のメイクは変遷し続けているのだろう。


(ヤマグチユキコ)

※イメージ画像はamazonよりDon't wanna cry