先日東日本に上陸した台風22号では、秋雨前線との相乗効果によって各地で大雨が降りました。

主に台風本体の暴風や雨だけが怖い8月までの夏台風と違って、秋台風はこのように、秋雨前線とコラボレートして台風から遠く離れた広い範囲に大雨をもたらすのが恐ろしいところ。
この秋雨前線は、夏になってずーっと北へ上がって消えていた梅雨前線が、秋の声と共に再び下がって来たもので、暑さと涼しさの季節を分かつラインである点では梅雨前線と変わりがないのですが、前線がもたらす雨の迫力の点でちょっと見劣りがします。で、この秋雨前線に湿った南風を吹き付けて、梅雨前線並に迫力をアップさせる役割を担うのが、前線に向かって北上してくる、今回の22号のような秋の台風たちなわけです。

さて、皆さんは、夏場で最も雨の多い月は何月だと思いますか? こう聞かれると大抵の人は、梅雨時の6月や7月と答えると思います。ところが統計を見てみると、夏の雨量には面白い地域差があることに気付きます。

梅雨のはっきりしない東北や北海道は別にすると、九州や瀬戸内沿岸から近畿中北部にかけての西日本では、夏季最も雨の多いのは皆さんの想像通り6月。これはもう、モロに梅雨のせいですね。
ところが、四国南東部から本州南岸(近畿南部、東海・関東)では、雨量が最も多くなるのは9月になっています。

このデータは、本州南岸では梅雨よりも、9月にこの地域をしばしば直撃する台風の影響による雨の方が多い、ということを教えています。そしてこの台風による雨をさらに広範囲に及ばせ、その雨量を増やす役割を果たすのが秋雨前線、ということになります。

梅雨の雨が少なめの関東では8月によく水不足が発生しますが、これを一気に解消してくれるのが台風や、それと秋雨前線のコラボレーションによる大雨だったりします。もし関東に一個も台風が近づかなければ、水不足が長期にわたり、被害が広がってしまいます。台風は人的・物的被害をもたらす厄介者ですが、本州南岸部の貴重な水源でもあるわけで、近づく台風に向かって、「どうか程よく弱まって恵みの雨だけ降らせて去っておくれ」と叶わぬ願いをかける関係者も多いとか。


亜熱帯と温帯の狭間に暮らす私たちは、宿命とあきらめて、被害を最小に押さえつつこの暴れ者の水の神=台風と共存してゆくしかないようです。(koala)