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90分の「暗闇芝居」を観た

真っ暗な中、90分の芝居が上演される。「下北沢ザ・スズナリ」で10月9日まで。

無言劇ならぬ「無見劇」。
音と気配だけの“真っ暗闇の芝居”「Show The BLACK II」が上演されると聞き、下北沢ザ・スズナリへ足を運んだ。

これは、大川興業の総裁の座に返り咲いたばかりの、大川豊氏の作・演出なのだが、その名前から「真っ暗闇をいいことに、上半身裸の黒タイツの人が好き勝手やりまくる」……などと想像していったら、あまりの落差・衝撃に腰を抜かすかもしれない。
随所に大川氏ならではの時事ネタ、ギャグが盛り込まれているとはいえ、男くさく、熱く、「すごくイイ話」なんである。

視覚障害のある主人公は、心肺同時移植を受けた後に、自分の中に芽生えてきた食の好みの変化、なぜか運動がしたくなるという衝動に、戸惑いを感じる。また、友人にも優しい性格になってきたことを指摘され、まるで「他人に乗り移られる」ような恐怖を取り除くため、自分のドナーを探しに行くというストーリーだ。

開演と同時に、場内は本当に真っ暗になる。最初は、真っ暗闇のなか、目を開いて観ていいのか、つぶって観たほうがいいのか、戸惑いながら、鑑賞していた。
だが、しばらくすると不思議なことに、真っ暗闇にもかかわらず、徐々に、声のする場所、気配のある場所に顔を向け、「目で追う」ようになってくる。

登場人物の顔も、風貌も見えないのに、声やしゃべり方から想像する「顔」が見えてくる。もちろん場面、背景も見えないはずなのに、ちゃんと頭の中で「絵」として登場するのだ。
主人公は、自分の中に新たなドナーの人格を感じつつ、「自分」を取り戻すために、あえてドナーがやっていた、あるスポーツに挑戦する。
それは、視覚障害のある主人公にとって、最も危険で、最も難しいと思われるスポーツ……。
およそ不可能と思われるスポーツを通じて、だが、主人公は初めて他人との本当の「会話」を獲得する。

真っ暗闇の中、何も見えずに手探りで観劇していた私たちも、次第に頭のなか、あるいは「心の目」で観る感覚をつかんでくるが、それは主人公の目や心とリンクしているのだろうか。
ところで、徐々に自分の頭のなかで見えてくる顔、姿、しぐさ、景色などは、基本的に「既知の情報」―どこかで見た顔や姿、景色などの組み合わせからつくられるわけだが、もともと目の見えない主人公にとっては、それらはどううつるのだろうか。

いろいろ考えさせられる、衝撃の作品であった。
(田幸和歌子)

2006年10月6日 00時00分

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