案内してもらったテーブルには「天王寺」という駅名がついている。そして、「お待たせ!」という威勢のよい声とともに御堂筋のレールから電車で運ばれてきたものは……串かつだ。


大阪名物の串かつが電車に乗って運ばれてくるという、なんとも面白いコンセプトの店は、昭和4年創業の新世界元祖串かつ「だるま」。現在関西に12店舗ある「だるま」の中でも、ここ心斎橋店だけの趣向だ。

客がタッチパネルで注文すると同時にキッチンで揚げられた串かつが、電車の模型に乗せられ目の前まで運ばれてくるという仕組み。テーブルに設置されている保温機に熱々の串かつを移動させて、光る赤ボタンを押すと「おおきに! また呼んでや! 」と電車は車庫(キッチン)へ。

座る席によるが、特注レールは2段式で上部が環状線、下部が御堂筋線をイメージして作られている。大阪情報コンピューター専門学校の生徒が壁一面に描いたという絵には、海遊館や通天閣はもちろん、大阪の名所がずらり。
店の柱に通天閣の足が描かれ、あたかも通天閣の上から街を見下ろしているかのよう。

それにしても老舗の有名串かつ店がなぜ電車に串かつを?
同店は145席と系列店の中でも席数が最も多く、ミナミのど真ん中と立地も良い。「食べておいしいのはもちろん、家族がアトラクションのように見ても楽しめる大阪ならではの店にしたい」と同社代表取締役の上山勝也さんが考案したという。

オープン当初は、店に電車が走るのは『だるま』らしくないと常連客から言われることもあったというが、開店から1年たち、旅行客や若い年代の人たちにも喜ばれるようになったという。「特に家族連れのお客様は電車目的でご来店されます」(店長笹部さん)

電車で串かつが運ばれることを知らずに来店し、驚く人も多いというが、写真を撮って喜ぶ人も多いという。おいしい串かつを食べつつビールを一杯ひっかけたいというお父さん、せっかくの休みなんだから家族で楽しみたいというお母さん、なんか面白い! が好きな子ども、家族みんなの思いをかなえてくれる。


先日、他県の友人から「大阪の串かつって、『二度漬け禁止』とか食べ方間違ったら怒られそうで怖い」と言われ、どれだけ怖い街と思われてるんや……と思ったが、二度漬け禁止のルールはとても簡単。同店でもそうだが、テーブル上には鉄製のソースの容器が置かれている。串かつを一度ソースに漬け、一口食べた後は、もうちょっとソースが欲しいと思っても漬け直さないこと。大阪に来たら「ソースは皆でシェアするもの」と、肝に銘じておいてほしい……。

「漬けすぎても辛くなりすぎず大人から子どもまで一緒に楽しめる甘めのソースなので、ソースの中に"ドバッ"っとつけて食べるのがだるま流です」(笹部さん)。
ソースは最初にしっかり漬ける、足りない時はサービスで出されるキャベツでソースをすくい取り、皿に入れて食べればあなたも立派な串かつ通! 覚えたらぜひ、同店へ出発進行しよう!!
(山下敦子)