日本国内でも有数の“メジャーなのに珍妙なスポット”熱川バナナワニ園。

もともと温泉の熱を利用し、ワニの飼育や熱帯植物の栽培を行っていることはよく知られているが、実際に行ってみると驚くのは、レッサーパンダが異常に多いこと! 
園の名には冠していないのに、なんとレッサーパンダの飼育数は世界一だそうだ。


いつから、なぜ、レッサーパンダ天国になったのか。
熱川バナナワニ園に問い合わせたところ、対応してくれたのは、広報担当の木田裕巳さん。

「日本にレッサーパンダが初めて来たのは、1985年11月2日、ワシントン動物園からでした。『ブリーディングローン(動物園同士が相互に動物を貸し出し・借り入れする契約)』として、日本の3つの園に1歳のつがいが来たんですが、その1つに選ばれたんです」

なぜ「バナナワニ園」なのに、レッサーパンダの預け先に選ばれたのか。実は名乗りを挙げたわけではなく、「寝耳に水でした」と木田さんは言う。
「ワシントン動物園が日本でのブリーディングローンの基地にする園を調査した結果、熱川バナナワニ園でワニの人工孵化を成功させていた実績に着目し、『珍しい生きものの繁殖ができるのではないか』ということで、ご指名があったようです」
日本に初めて来た3組のつがいのうち、他の2園のレッサーパンダは残念ながら死んでしまったそうだが、熱川バナナワニ園では無事繁殖に成功。


日本初のレッサーパンダ飼育だっただけに、飼育方法はどうやって研究したのだろうか。
「当時は専門書が全部英語でした。そのため、飼育員さんは専門書を読まず、どうしたかというと、毎日いったん自宅に帰って夕食と風呂を済ませてから園に戻ったんです。そして、可能な限りレッサーパンダのケージに入り、横に藁を敷いて寝泊りしていたんですよ」
そうした献身的な飼育の甲斐あって、メスのレッサーパンダが妊娠・出産した際には、飼育員に自ら生まれたばかりの赤ちゃんを差し出して見せたというから、スゴイ信頼関係である。
その後は、血が濃くなり過ぎないよう、他の動物園とのトレードをしながら、現在まで60頭を超える繁殖に成功。現在、ニシレッサーパンダ22頭を飼育している(平成26年7月4日現在)。


ところで、ケージには1~3頭ずつ、誕生日が書かれて入っているが、7~8月生まれがやたらと多いのはなぜ?
「人間も春になると異性に対する感情が高まってくるかしれませんが、レッサーパンダも暖かくなってくる2~3月頃に交尾し、6~8月に子供を産むことが多いんです。生まれたものは雌雄判別し、別々のケージに入れ、純潔を守っています。生まれた時期が近いもの同士を一緒にすることで、ケンカをしない、しても大ごとにならないんですよ」

ちなみに、今年5月29日に、オランダのロッテルダムとトレードした2頭のうち、メスは今「太っているのかご懐妊なのか、お腹が大きい」とのこと。もしかしたら8~9月頃、新しい命に会えるかも?
(田幸和歌子)