お菓子を本物そっくりなネイルオブジェにしている人がいる。名前はSAYOKO。
ネイルオブジェは、ネイルを立体的なアート空間に見立てた作品で、まさに職人技だ。以前、「超繊細! SAYOKOさんの”ネイルオブジェ”。きっかけは陸上選手のジョイナー」の記事でも紹介したことがあるが、彼女が新シリーズとしてお菓子にそっくりなネイルオブジェを作っている(非売品)。非常によくできているので、クイズにしてみた。

●4つの中に、ひとつだけネイルオブジェが
問題:それぞれ、1つだけ樹脂で作った「本物のお菓子にそっくりなネイルオブジェ」が紛れ込んであります。どれでしょう?(残りの3つは本物なので食べられます)
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ


答え
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ


ちなみに、ネイルオブジェをアップにすると、こんな感じ。

本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ

色や溝の雰囲気まで見事に再現。この「そっくりとんがりコーン」ならコーンを指にハメ放題。※樹脂なので食べられません
写真にある「コアラのマーチ」のように指につけることができる。

他のネイルオブジェも見比べてみて欲しい。
・アポロ
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ

・果汁グミ
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ

・きのこの山
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ


――なぜこのようなネイルを作ろうと?
「まずは、もっとネイルに関心を持つ人を増やしたかったんです。アートの一種としてこんな表現方法があることも知って欲しかったし、爪は誰の手(足)にも生えているので、【ネイルは女性の為だけのもの】と限定されがちな空気を変えたかったんです」

――確かにこれは思わず気になっちゃいますね。

「作品を見て、お菓子のネイルを付けたら誰に見せようかな? ネイル好き女子との話題にしてみようかな? と、誰でも話のネタに使えると思いますし、普段ネイルやネイルオブジェに興味のない人でも、見た目がお菓子にそっくりだったら興味を持ってもらえるのではないかと思って【誰でも知っているお菓子】をモチーフに選んで作りました」

SAYOKOさんは「作りました」と簡単に言っていたが、制作はかなり大変そうで……。

「まずは、そのお菓子の色に似ているネイル用のアクリル樹脂を用意して、実物を見ながら筆で原寸大に近い形を作り、ネイル用のドリルなどで慎重に形を整えます。あとは足したり削ったり……の繰り返しです。形ができたら、色や質感を本物に近づけるための最終的な色付けをして、完成です」

――何日間くらいで完成しますか?
「形にもよるけど、3日間くらいです。型などはなく、全てフリーハンドで似せて作っているので特に『アポロ』みたいに規則的に波の形があると難しい。あとは、お菓子に焦げ目があるとその質感を醸し出すのに苦労しますね」
そのほか、お菓子によっては表面のツヤやザラザラ感をいかにして本物に近づけるかで悩むという。


ちなみに「たけのこの里」と「きのこの山」とでは、「きのこの山」の方が難しかったという。
「きのこの山の、チョコの傘の部分の形を作るのがとにかく大変で……」
なんて、貴重な情報なんだ。

ちなみに、SAYOKOさんは「TOKYO NAIL EXPO 2013 全日本ネイリスト選手権 チャンピオン」だ。この時は「メンズネイルケア」という男性の爪を磨き、1本ネイルアートをする競技に出場し、見事優勝。名誉審査員賞もダブルで受賞した。
「ネイルは女性の為だけのもの、という空気を変えたかった」というスタンスを、プロの頂点を決定するコンテストの場でも示している。


また彼女が作るのは、お菓子のネイルオブジェだけじゃない。ユニークな視点と、ネイリストとして日本一の技術を応用したものであるからこそ、SAYOKOの作るネイルオブジェは、ここまでリアルで繊細な仕上がりになり目を引くのだ。

・そのほかのSAYOKOさんの作品
本物と見分けがつかない! SAYOKOのお菓子そっくりネイルオブジェ

(左)ケリーのバッグ
「今回のお菓子シリーズもそうですが、みんなが知っているモチーフ=少しでも似ていないと違和感があり、一気に変な感じになる……という紙一重の挑戦なので、リアルさを追求して慎重に作った初期の代表作品です」

(右)歌舞伎バージョン

「『じいさん ばあさん』という歌舞伎の演目をネイルオブジェで表現しました。これは、実物に完全に似せるのではなくテーマの世界観に沿うように意識して作った作品です。物語が絵巻物風に10本の爪の並びで進んでいくように、爪の位置関係も考慮しながらシーンを割り振り、(手を差し出された状態で向かって見ると、中指が1番長いから位置が下、親指と小指は短いから少し上……10本並ぶと「W」のようになるのも利用しました)右手小指(左端)から始まり、左手小指(右端)で終わるように作ってあります」

小さな立体の登場人物は、衣装や髪形や色使いにもこだわってお話の世界観を表現したとのこと。

自身の作品が「シャネルグループ」のフランス社内誌や「マダムフィガロ」のフランス版で紹介されたこともある。

「私は自分の表現方法として新しいものを作りたい、ネイルでどこまで表現できるのか試してみたいので、既存のネイルアートのイメージを壊したい、広げたいという思いもあって、敢えて実用性よりもアート色の強いネイルオブジェとして、いろいろな作品を作ってきました」

――確かに、アート色が強いですね
「他に同じスタンスで作品作りをしているネイリストがいない、自分がオンリーワンである点も大きいし、モチーフの身近さでネイルの間口を広げながら、実はプロでも簡単にはマネができない難易度だということも、自分のこだわりを最大限に出せる場として意味があります。今後も私にしかできない新しいこと、面白いことに挑戦していきたいです! ネイルオブジェを確立させて、いつかは大好きなレディー・ガガさんやきゃりーぱみゅぱみゅさんのようなアーティストの衣装の一部として、また 手元のアップを使う広告のアイコンとして、コンセプトにあった作品を作らせていただける日がくるように、日々精進していきます」

夢を話し始めたら止まらくなるSAYOKOさん。
「今回のお菓子シリーズは、メーカーの方が見てくれていたらいいなぁ……。直接作品と本物を混ぜてお見せしながらクイズを出したいくらいの自信作なので、ぜひぜひご連絡お待ちしてます笑」

よりリアルに近づけることに寸暇を惜しまない、SAYOKOさんの挑戦は続く。
(取材・文/やきそばかおる 撮影/今井健太)

※お菓子のネイルオブジェは非売品です。
「『こんなネイルオブジェは作れますか?』『ほかの作品についても見せてほしい・展示させてほしい』など、ご連絡・ご相談はウェブサイトのメールアドレスまでお願いします」(SAYOKOさん)