フランスは変だ。日本が変なのかもしれない。
とにかく現地で生活していると、日本のスタンダードと異なることに多く出合う。その中で特に困るのが家の問題だ。実際に出くわしたトラブルを紹介してみよう。

■窓、扉が閉まらない
フランスの工事業者は日本と比べ全体的に雑だ。特にパリの場合、家を新築するということはあまりなく、昔からの集合建物の内装をリフォームすることが多い。私が今住む部屋は、入居契約後、リフォームしたてで入居したのに風呂場のドアが閉まらなかった。


知人の家はさらにひどく、窓のサイズが外枠に合っておらず、窓が閉じなかった。観音開きの窓を閉じようにも両扉の幅が少しずつ長いので、閉めると山のような形でつかえてしまう。防犯上もまずいし隙間風も入り放題なので、家主に修理を要求したものの、余計な出費を避けたがる家主は乗り気じゃない。直すふりをしつつ日数を稼ごうと、結局同じ計測を3回しに来たそうだ。サイズを図った後も、今度は合うサイズの窓が見つからないと、引き延ばそうとしたので、我慢の限界に達した知人は、訴えると書面を家主に送りつけたら、ようやく対応してくれた。

話はこれで終わりではない。
ちょうど良いサイズの窓を見つけたものの、工事業者はそれが元の通り少し大きいサイズだと勘違いしていて、窓周囲の壁を大きめの窓に合うように壊し始めたそうだ。窓のサイズは合っていると説明しようにも、やってきた職人は外国人でフランス語がほとんど通じず……結局窓の外枠は拡張。案の定、持ってきた窓は小さくて収まらず、壊した部分に木の板をはめて、取り繕った。知人の経験に限らず、大なり小なり、フランスで暮らしていると、このような話は多い。

■自分の部屋の壁が壊される
雑な工事は私の家でも起きた。ある日、隣の部屋がリフォームを行い、業者は隣室のさまざまな仕切り壁を壊していた。
嫌な予感はしていたが、勢いあまって私の部屋との境にある壁も壊してしまった。そのため、わが家のトイレと隣のリビングが一体になった。応急処置のための仕切りが作られるまでにも数日間かかり、その間私は、隣人のリビングとつながったトイレで(改装中のため工事業者しかいなものの)、用を足さねばならなかった……。

例え壁があったとしても、近所との相性はとても大事だ。フランスの集合住宅は日本と比べて壁が薄いことが多く、隣室の会話や生活音が丸聞こえである建物も多い。知人が住んだ部屋は、隣人が仕事で毎日夜遅く帰宅する人で、深夜3時くらいにいつも料理をしていたという。
壁が薄いのでガチャガチャという音は聞こえてくるし、隣との壁際にあった友人のベッドに振動も来ていたそうで、とうとう耐えきれずに引っ越した。

また別の知人が入居した物件は、建物内に部屋を持つ各家主が建物の管理費を払っておらず、管理業務が破綻していた。そのため定期的なネズミやゴキブリの駆除も行われず(フランスは特にネズミが多い!)、建物はそれら小動物の温床に……。

フランスでは、決められたことをきちんと履行しないケースによく出合う。一度決めた規則は基本的に守る日本から来ると戸惑ってしまうが、裏を返せば、決まっていることでも覆る可能性も往々にしてあるということ。自分が何かしたいと思うことがあり無理だと言われた場合でも(例えそれが役所の手続きなどでも)、筋道だって粘り説明すれば通るのがフランス。
捉え方次第なのだ。でも、やはり家は落ち着いて住みたいかな。
(加藤亨延)