日本でもすっかり国民行事となったクリスマス。日本のクリスマスケーキといえば、サンタクロースやヒイラギを飾ったかわいらしいものが定番だが、最近は本場ヨーロッパスタイルのクリスマケーキやお菓子にも注目が集まっている。


たとえばフランス版のクリスマスケーキ、丸太型の「ブッシュ・ド・ノエル」は以前から日本でもおなじみ。また、ドライフルーツやナッツが入ったドイツのクリスマス菓子「シュトーレン」も、ここ数年よく見かけるようになった。
イタリア版クリスマスケーキ、パネトーネって?
「シュトーレン」(※ベーカリー「ドンク」のもの)。クリスマスを迎えるその日まで、少しずつスライスして食べる

そしてここ数年、じわじわ日本でも知名度を上げているのが、イタリア・ミラノの発酵菓子「パネトーネ」だ。卵黄とバター、そしてイーストのかわりに、“リエビト種”という北イタリアの伝統的な複合酵母種を使い、熟成発酵させたソフトな生地の中に、ドライフルーツなどがたっぷり入っている。
イタリア版クリスマスケーキ、パネトーネって?
ドンクの「パネトーネ」。しっとりした生地とやさしい酸味がクセになる

作る際は、生地がやわらかいのでしっかり練って伸ばす必要があり、また、焼き上げたあとも生地がやわらかいので、重みでつぶれないよう、逆さにして冷ますのがポイント。名前の由来は、15世紀のミラノで菓子屋であったトニーが作ったことから、“トニーのパン”という意味で“パネトーネ”と名付けられた、など諸説ある。


先日、日本で30年近くパネトーネを販売しているベーカリー「ドンク」がパネトーネの試食会を開催。イタリアの現地視察から帰国したばかりの同社パン職人・佐藤広樹さんに現地のパネトーネ事情を教えてもらった。
イタリア版クリスマスケーキ、パネトーネって?
ドンクのパン職人、佐藤広樹さん。パンの世界杯「クープ・デュ・モンド」にも出場するなど腕を振るう

佐藤さんがミラノを訪れたのは11月末~12月はじめだったが、この時期のミラノはパネトーネ一色といっても過言ではないほど。お菓子屋さんはもちろん、パン屋さんやカフェのイートインメニューでも見かけたり、スーパーではスプマンテ(発泡ワイン)とセットになった箱入りのパネトーネが売られていたり、とにかくそこかしこで目にする。値段もピンキリな分、味もそれぞれらしい。
イタリア版クリスマスケーキ、パネトーネって?
佐藤さんが現地で食べたパネトーネ。箱だけでもカラフル! 現地では生地量750g~1kg前後のものが多い

滞在中にはミラノでパネトーネ見本市も開催されたそうで、40社以上が出展し、自慢のパネトーネを披露。
チョコレートを使ったものやフルーツを使ったものなど、個性豊かなパネトーネがそろい、一人で5~6箱買う来場者もザラだったとか。日持ちがするパネトーネは、この時期、お歳暮感覚で親しい人に贈る人も多いのだ。ちなみに同見本市では伝統的なパネトーネ部門賞にアルフォンソ・ペペ(上の手前の緑の箱)、革新的なパネトーネ部門賞にサル・デ・リーゾが選ばれた。

ドンクでは北イタリアのヴェネト州で「サンレモ」という洋菓子店を営むオリンド・メネギン氏から秘蔵のパネトーネ種と製法を受け継ぎ、約30年間、本場の味を日本に伝えているそうだ。全国のドンクの店舗では12月25日(木)まで、パネトーネをはじめ、ヨーロッパ各国のクリスマス伝統菓子などを販売する「クリスマスフェア」を開催中だ。
イタリア版クリスマスケーキ、パネトーネって?
ドンクのクリスマスフェアではヨーロッパ各国のクリスマス伝統菓子やこの時期だけの限定商品がそろう

パーティシーズン、ぜひ世界各地のクリスマスケーキやお菓子をいろいろ楽しんでみては?
(古屋江美子)