いま、空前のパンブームがきているらしい。
私の友人も「シニフィアン・シニフィエ」やら「ポワンエリーニュ」など、早口言葉か! と思う名前のお店をたくさん知っており、そこのパンが美味しい~! などと話しているのをよく聞く。
そんなオシャレなお店には特に縁はないが、私もパンは好きである。

とくにバゲットが好きなのだが、いつもお店に行くとそんな私を惑わすものがある。バタールだ。
見た目はバゲットより太く、バタールというくらいだからバターが多いのか? と思っていたが、そんな私の疑問を解消してくれる本と出会った。それが、『世界のかわいいパン』である。

バゲットとバタールの違いはアレの数 『世界のかわいいパン』
『世界のかわいいパン』ぱんとたまねぎ (イラスト),井上好文 (監修) / パイインターナショナル


バゲットとバタールの違いは?


本書によると、バゲットとバタール、太さは違うが素材も重量も同じらしい。大きく違うのは「クープ」と呼ばれる窯入れの直前に生地の表面に入れる切れ目の数が違うことだ。
バゲットが7~9本のクープが入っているのに対し、バタールは3本。スライスしたときの断面積が大きいので、サンドイッチなどに向いているらしい。ちなみにバタールはフランス語で「中間の」という意味で、バターは関係がないとのこと。残念!

このような知識も満載ながら小ぶりなサイズだったり、「ぱんとたまねぎ」さんのイラスト解説がとってもかわいかったりと、パン好きのみならずかわいいもの好きであれば、本書はつい手元に置いておきたくなる作りだ。

発行元のパイインターナショナル編集、関田さんは「もともと私がパン好きなのですが、味だけではなく、パンの形もかわいい! と常々思っており、8年ほど前にも一度企画を出したのですが通らず、最近のパンブームに便乗して企画を通しました!」と発行の経緯を教えてくれた。

世界のスタンダードなパンを網羅


書籍には、フランス・イタリア・ドイツ・スイス・アメリカや、日本を含めたアジア各国などのパンが網羅されている。

「世界のパン事情につきましては、各専門書を読んだり、監修の先生に伺ったり、また現地の友人などにも聞いて取材しました。世界のスタンダードなパンは網羅したと思っておりますので、“やりきった感”でいっぱいです!」と関田さん。確かにいろいろな国のパン情報が満載で、見ているだけでついついよだれが出そうになる。

この記事を書くため、何度も本を開いていろんなページを見ているのだが、本書には、その度に脳内に焼きたてパンの香りが充満し、「ああ~パンが食べたい~」という気持ちになるほど、かわいいパンが美味しそうに写真に収められている。

バゲットとバタールの違いはアレの数 『世界のかわいいパン』
このようにパンの名前がかわいいイラストとともに詳細に書かれており、おいしそうなパンの写真が見開きで掲載されている。


掲載されているパンを売っている店舗は、「スタンダードな形で美しくて、おいしい」を基準に、関田さんが主にご自身で決めたとのことだが、イラストレーターの「ぱんとたまねぎ」さんやパンラボの池田浩明さん、監修の井上好文先生などからの推薦や、パン好きの同僚からの推薦も店舗選びの基準としています、とのことだった。

掲載店情報は、書籍の後ろにまとめてあるので、関田さんのパンへの熱い思いを感じつつ、ぜひ見ていただきたい。
紹介されている世界の代表的なパンは、都内近郊で購入できるので、パン屋巡りのガイドブックとしても参考になること請け合いだ。

バゲットとバタールの違いはアレの数 『世界のかわいいパン』
こちらはシナモンロールのページ。何気なく買っていたが、大きな渦巻き形と、渦巻きが両端にあるタイプがあるとのこと!今度パン屋さんに行ったらぜひチェックしてみたい。


最後に、関田さんにどのような人にこの本を読んでもらいたいかを聞いてみた。
「パン好きの人はもちろん、常々パンがかわいいと思っている『パン雑貨女子』、またパンの形や材料の背景となる世界の文化的な事情も入れておりますので、民族学的な内容に興味のある人も、読んでいただけたら嬉しいです」

私のように、普通にパンが好きだけれど詳しく違いはわからないという人にも参考になるだろうし、パン好き女子、パン雑貨女子のみならずパン好き男子も満足できる内容の本書。かわいらしい表紙はインテリアとしても使えそうなので、ご家庭に一冊いかがだろうか?
(梶原みのり/boox)