今、ヘヴィメタル・シーンで旋風を巻き起こしているバンドがある。その名も、「オバメタル・ライジング」。
バンド名から想像できる通り、3人のオバさんによる本格メタルバンドだ。ドラム&ヴォーカルの“雷神”は44歳、ギター“風神”は40歳、ベース“水神”が45歳と、おしゃれに言えばアラフォー世代の中年女性が、髪を振り乱してオバさんの日常を歌い上げている。

たとえば「ゴッド・オブ・サンダー」では、賞味期限を“マイルール”で決め、昨日のおかずをレンジで温め直して食卓に並べる主婦の姿が描かれる。家計節約のため、子どもたちを連れて特売セールへ駆けつけるのも主婦ならでは。

<白クマを守れ!>と熱く叫ぶ「炎のエコロジー」では、ゴミの分別やエコバッグでの買い物をすすめている。なんてったって、オバさんだもの! 実際に、演奏を聴いてみたい人は、「YouTube」をチェックするといいだろう。


もろにオバさんを表現した歌詞と、激しいヘヴィメタルの豪快なまでの併せ技。これが笑わずにいられるだろうか。ライブ会場では、オリジナルの「オバメタル・エコバッグ」を販売しているというからさらに面白い。

このバンドの誕生は、雷神が「ゴッド・オブ・サンダー」の歌詞を思いついたことがきっかけになっているという。♪I am the god of the thunder~ゴッド・オブ・サンダー~オブサンダー~オバさんだ!

「雷鳴が轟く中で思いついた歌。口ずさんでいるうちに、これって『アイ・アム・オバさんだぁ~』って聞こえるなと気づいて。
実際、オバさんなワケだし、オバメタルでいいかって(笑)」(雷神)

こう聞くと、フザけているだけのイロモノ・バンドかと思ってしまうが、実は3人ともバンド歴25年以上(4半世紀!)のベテランで、かなりの実力者。インディーズながらアルバム『ゴッド・オブ・サンダー』はディスクユニオンで販売されており、「いかすバンド天国 ON WEB 2008」のベスト30にも選出された。さらに、ユーザー投票による上位8位に選ばれれば、8月26日にSHIBUYA-AXで開催されるグランドチャンピオンシップにも登場するという。

「ファンの反応が大きくて驚いている」というのは、ヘヴィメタル一筋の水神だ。今までずっとメタルバンドをやってきて、こんなに注目されたのは初めてのことだと話してくれた。「オリジナルグッズがほしい」とのファンの声を受けて作ったエコバッグは、「お買い物に使う自転車の前カゴにぴったり」(水神)だそう。
近いうちに、鍋つかみを作る構想も温めているとのことだ。

「白クマが好きです」とつぶやく風神は、バンドへの想いをこう語る。

「本来、ヘヴィメタルは反抗の象徴。若者がエネルギーを爆発させるための音楽だと思うんです。でも、最近のメタルはテクニックはすごいんだけど、“なんじゃこりゃ?”っていうエネルギーに欠ける気がする。『ヘヴィメタルはこうやってやるんだぜ!』っていうところを見せたい気持ちもありました」(風神)

さすが、オバ……いや、大人の女性ならではのしっかりした意見である。
テクニックも思想も、笑いのセンスも持ち合わせた「オバメタル・ライジング」は、まさにヘヴィメタル・シーンの“夜明け”を象徴しているのかもしれない。

最後に、雷神がこんなコメントをくれた。
「ヘヴィメタルを聴かず嫌いの人もたくさんいると思うけど、あなたが壁にぶつかった時、自分の殻を破る勇気がほしい時、ヘヴィメタルは必ずあなたの最高の友達になってくれるはず。もちろん、オバメタル・ライジングもね!」(雷神)

エコバッグ持ってママチャリで買い物に行っても、ヘヴィでメタルな闘う気持ちを忘れないオバちゃん&オッちゃん。そんな中年になりたいみなさんは、ぜひご一聴を。
(塩澤真樹/C-side)

オバメタル・ライジング公式ブログ