アレサ・フランクリンの『Rock Steady』をサンプリングした、安室奈美恵の『Rock Steady』をよく聴いている。
元ネタとなっているアレサ・フランクリンの『Rock Steady』が好きだということもあるのだが、原曲を上手くサンプリングしている作品だと思う。


サンプリングとは、「既存の楽曲の音源の一部を取り出して、新しい楽曲に組み込む」という音楽制作方法である。
要するに、気に入ったドラム音やベース音などを拝借し、新たに曲を作ってしまおうというものだ。抜き出した音の組み合わせだけで全てを作ることも可能なので、楽器が弾けなくても立派な音楽を作ることができる。また、聴く側にとっては、元になった音ネタを探して、聴く音楽の幅を広げるといった楽しみ方もあるのだ。
が、一方で権利関係のトラブルと切っても切れない縁を持っているのもこの音楽の特徴。裁判沙汰になったなんて話はよく聞く。


考えてみると、サンプリングという音楽制作のことは知っていたが、権利関係の許可の取り方などは全然知らない。あれってどうやって取るのだろう? 別に、サンプリングで楽曲を作る予定なんて全くないのだが、無性に気になった。

社団法人日本音楽著作権協会(以下JASRAC)によれば
「サンプリングをする場合は、元の曲の著作権者(作詞者、作曲者)と著作隣接権者(レコード製作者、実演家)の許可が必要です。作詞者、作曲者がJASRACに著作権を預けている場合は、JASRACが著作権手続きの窓口になります。ただし作詞者、作曲者は自ら創作した作品について勝手に“改変”されない権利(著作者人格権)を専有していますから“一部だけ切り取る”ことが可能かどうか、(JASRACとは別に)本人に許可を得る必要があります。著作隣接権(レコード製作者の持つ複製権、実演家の持つ録音権)のことを業界では通称『原盤権』と呼んでおり、原盤権の手続きについては、まずはその作品のレコード会社に問い合わせれば良いと思います」とのこと。


なるほど、【作詞者、作曲者の許可】→【著作権】→【原盤権】という流れか。
では、作詞者、作曲者の許可が下りたとして、著作権の許可はどのようにして取れば良いのだろう?

「著作権に関しましては、JASRACの管理楽曲については使用料規程というものを設けているので、その規定に沿った金額を払う必要があります。金額ですが、有名曲だから高い、マイナーだから安いといったことはなく、全て一律になっています」とのこと。

さて、無事に著作権にケリをつけたとしても、まだレコード会社が持っているという原盤権が残っている。原盤権にはどう対応するかを知るために、社団法人日本レコード協会にお話を伺った。

「原盤権は著作権とは違い、作品によって使用料が変わってきます。
値段を決めるのは原盤権を所有している会社なり人になります。用途によっては利用を断られることもあります」とのこと。

とあるレコード会社に問い合わせたところ、申込書のようなものを用意しているとので必要事項を書いて、送ってほしいとのこと。その書類を見て、利用を許可するか検討し、許可された場合は値段などを知らせるんだとか。

とまあ、著作権やら原盤権やら、なかなか複雑な手順を踏まなければならず、正直めんどくさいと思ってしまった……。サンプリングを取り入れているミュージシャンは、全員この行程を経ているんだろうか?

JASRACの担当者はこう語る。

「きちんとした許可を得ていない作品もあり、あとで問題になることもあります。また、『○○小節までならOK』『何秒までならOK』と思っている方もいますが、1秒でも無断で利用することは違反になります。ですので、サンプリングをされる場合はしっかりと許可を得て頂きたいです」とのこと。

とはいえ、サンプリングのような音楽制作の良さは、楽器を弾けなくても気軽に音楽が作れるという敷居の低さにあるようにも思える。ガチガチに守られてしまったら、その手軽さが失われないだろうか?

「確かに、サンプリングミュージックはそういった面もあるかと思います。ですが、やはり野放しにしては、著作権や原盤権を持つ人の権利を害するとして、サンプリングという音楽制作自体が悪く見られてしまいます。
サンプリングという音楽制作を守るという意味でも、きちんとした手順を踏んで利用してもらいたいと思っています。私どもとしましても、サンプリングをするにはどうしたら良いのかなどを説明したり、原盤権を持つレコード会社を案内するなどをしております」とのこと。

人の曲を使って全く新しい曲を作るという、サンプリング。その特殊な手法故に、色々と問題にもなるが、きちんとした許可を得れば訴えられる事はありません!
(ドープたつま/studio woofoo)