国内外問わず、観光地でおみやげ屋さんに立ち寄ると、かならずと言っていいほど並んでいるスノードーム。だれかにもらったり、何となしに自分で買ったりしたものが我が家にもいくつかあるが、ドームの中の小さな世界にちらちら雪が降るのを見つめていると、ふとした日常の隙間に旅の想い出がよみがえってくるような気がする。


そんなスノードームを、世界各地から集めて展示している「スノードーム美術館」に行ってきた。「スノードーム美術館」は、NPO法人・日本スノードーム協会が運営している、世界で唯一スノードームを常設展示している小さな美術館で、廃校になった校舎を利用している「IID 世田谷ものづくり学校」内にあり、入場料無料で見学することができる。

ドキドキしながら展示室に入ると、世界中から集められたスノードームがずらり! エッフェル塔や自由の女神などがモチーフのおなじみの観光地ものや、物語をモチーフにしたファンタジックなもの、招き猫が入ったものなどさまざまなテーマのものがあり、形もドーム型や球の形をはじめ、ボトル型、ピラミッド型(もちろんエジプトのスーベニール)、テレビ型、ハート型、ジオラマタイプなど、実に多彩。

中でも1930年頃に日本で製造されたというアンティーク・スノードームは、台座が貝で独特な和の雰囲気。美術館の方に話を伺ったところ、日本はかつて有数のスノードーム生産国で、観光地のおみやげとしてはもちろん、アメリカにも多く輸出していたのだとか。

スノードームの起源には諸説があるが、1889年のパリ万博でエッフェル塔を配したものがつくられたのが、今日のスノードームの始まりと言われている。
よって発祥の地であるヨーロッパのものは、やはり美しく繊細なものが多い。アメリカのものはキッチュでおもちゃ的な雰囲気。そして日本やアジアのものはなんとも自由。招き猫のドームは雪の代わりに小判が舞うし、中国のドームは金色の毛沢東にお金が舞っていたりと驚かされる。

また、併設のミュージアム・ショップでは、カナダやオーストリアのスノードームをはじめ、自分でスノードームを手づくりすることができるオリジナルキットも販売している(1,365円)。
私は以前クラフトショップで市販のスノードームキットを購入してオリジナル・スノードームをつくったことがあるのだが、この美術館のキットが従来のものと異なる点は、水の中にオブジェを閉じ込めるのではなく、ドーム中央のすき間に写真やイラスト、フィギュア等をコラージュして配置する点。
水に入れるわけではないので、紙や布も自由に使うことができ、中に入れるものの幅は制限されるものの、さらにお手軽にオリジナル・スノードームをつくることができるのだ。
なお企業向けには、より本格的なオリジナルスノードームの制作も受け付けているそう。

ひとつひとつに物語と浪漫があるのですっかり引き込まれ、それぞれの特徴に注目したり、ただゆらゆらと水の中の世界を見つめてみたり、世界中から集まってきたスノードームで空想の世界旅行を楽しんだり……思わず時間を忘れて見入ってしまった私。
美術館内では週に1日(2回制)で上記オリジナルキットを使用したワークショップも行われているし、スノードームは全4,000個あまりの所蔵品の中から1,000個を不定期で入れ替えて展示しているそうなので、何度訪れても楽しめそうです。
(磯谷佳江/studio woofoo)

※参考文献:『Wonderland in Snow Dome スノードームの不思議な世界』(発行:スノードーム美術館)