トトロの木、と聞いてどんなものを想像するだろうか。

山形の親戚に「トトロの木」を見に連れて行ってあげようか、と言われた瞬間、私はジブリアニメ「となりのトトロ」に登場するような楠の大木をイメージした。
あの作品に描かれた神聖な森の雰囲気が好きだったのでぜひ連れて行って! と懇願。

やってきたのは山形県最上郡鮭川村。村の名になっている一級河川「鮭川」が流れ、山あいののどかな風景が広がる。役場の案内板を頼りにしながら車で山の中へ入って行ってしばらく、田んぼの中にポツンとそびえる大木が目に入ってきた!

手前に作られた駐車スペースに車を停め、そこからは徒歩で木の下まで行くことになる。徐々に近づいてくる巨樹の迫力に鳥肌を立たせながら、周りを囲うように作られた木道を歩いて、ベストポジションから眺めると……。写真のように、なるほどトトロ型!

こんもりと茂った胴体部分から頂点がぴょんぴょんと耳のように二つ突き出し、トトロさながらの愛嬌でたたずんでいる。
幹に近づいてみると、今度は厳かな雰囲気に圧倒される。幹周りは5mもあって、樹齢は700~800年以上にもなるとのこと。根本に古びた祠があり、この木が遠い昔から信仰されてきたのが伝わってくる。遠くから見た形もトトロだが、幹に近づいた時の厳粛な空気もトトロの世界を感じさせる。

この木の正式名称は「小杉の大杉」(この名前も面白い)と言い、芯が2本あるために昔から夫婦杉と呼ばれ、親しまれてきたという。それが、いつ頃から「トトロの木」と呼ばれるようになったのだろうか、鮭川村役場にお話を伺うと、
「平成3年か4年頃、JRのPR広告にこの木の写真が使われたことがあったんです。
それをご覧になった方が、木の形がトトロにそっくりだということで憶えていたらしいのですが、探し当てることができずにいたそうです。平成8年になってテレビ番組の『探偵ナイトスクープ』に依頼されたところ、それがこの村の“小杉の大杉”であるということがわかりまして。そして番組放送以来、大変な反響をいただいて、“トトロの木”と通称されることが多くなったんです」というお答え。探偵ナイトスクープの偉大さを、こんな形で改めて思い知るとは……。

有名な木ということで遠方からの見物客も多く、「私の見た中では、なにわナンバーの車でいらした方もいましたよ」とのこと。高速道路料金が割引になった影響で、県外からの訪問がさらに増えたそう。


木のお手入れなど、大変なのでは? と思ったのは素人考えで、「村指定天然記念物になっておりますので、まったく手は入れず、あれは自然の形なんです。木の周辺の道や駐車場の整備を、地域住民の方々と行っております」ということだった。天然物のトトロなのである。

最後に、トトロの木の一番の見頃について伺うと、「周りの景色がその時々によって少し変わるぐらいで、木も紅葉しませんので、どの季節もおすすめですよ。ただ、木の近くまでの道路が、除雪しない道路なので、冬はかんじきを履いて30分ほどかけて歩かないとなりません。ですので、やはり春の雪融けから秋までがいいと思いますよ」とアドバイスをいただいた。


トトロファンはもちろん、自然が生み出した不思議な造形を間近で見たい方はぜひ訪ねてみて欲しい!
(スズキナオ)