もう少しで端午の節句だ。端午の節句といえば、ちまきに、そして柏餅。

この柏餅が全国のスタンダードかと思いきや、北海道や東北地方ではどうも様子が違うらしい。

青森と北海道で端午の節句に登場するのは、「べこ餅」と呼ばれる和菓子。

まず青森で食べられるべこ餅は、甘いもち米に色をつけ、何色も重ねて切ることで花模様などを表現したもの。
柏餅と違って餡は使わず、食べ方は蒸したり焼いたり。青森では端午の節句、1カ月遅れの6月5日に食べられるそうだ。

そしてこのべこ餅文化、江戸方面には流れず北海道へと北上した。

北海道のべこ餅もまた餡を使わない。黒糖と白糖で色を付けた2つの餅生地を重ね、まるで葉っぱのような形にまとめる。
色鮮やかな東北のものとは違って、こちらは白と黒のシンプルな見た目。ずっしりとした風貌はいかにも素朴。
食感はどちらかと言えば餅よりもネットリとして、ういろうにちかくお腹も膨れる。

このべこ餅、明治30年頃の文献には登場しているそうで、小樽や北海道に多い「東北由来の文化のひとつでは」と、観光協会の方は言う。


そもそも北海道小樽にはお餅屋さんが多いのだそうだ。
それは肉体労働者が多かったせい。ともいわれているが、真偽は定かではない。しかし実際、小樽には餅や餅菓子好きが多い。このべこ餅も一年をとおして販売され、何も端午の節句用だけと言うわけではないそう。

もともと端午の節句にはお餅を食べる習慣があり、お餅の中でも北海道ではべこ餅の人気が高かった。

そこで一年中販売しているべこ餅が、端午の節句に脚光を浴びる結果になったのかもしれない。もちろん柏餅の方が好きと言う人もいるが、べこ餅を好んで食べる人が多い。
さらに「柏餅も売られていますが、ほとんど見かけませんね」。小樽における端午の節句のスタンダードは、べこ餅に軍配が上がるようだ。

今では和菓子屋さんやお餅屋さんで購入する人が増えているそうだが、べこ餅もかつては各家庭で作られていた。
作り方は「材料はもち粉と上新粉、それに上白糖、黒糖。
これらを練って蒸し、重ねて捻った上で切り、成型した後に蒸す」という簡単なレシピ。

賞味期限は2~3日。もって1週間。お餅なので当然、日が経てば固くなる。
再度蒸せば柔らかくなるそうだが、できるだけ早めにいただきたい。
外で買うだけでなく、家庭で作っても案外簡単。
今年の節句は、北海道スタイルでお祝いしてみては。
(のなかなおみ)