最近、書店や、雑貨を扱う書店などに行くと、ポケットサイズの絵本をよく見かけるようになった。

たとえば、『ウォーリーをさがせ!』や『はらぺこあおむし』など、私たち大人にとってもなじみある絵本が、小さなサイズで登場している。


コンパクトさと手頃な値段で、思わず手にとる人も多そうだが、こうした絵本のポケットサイズ化はなぜ増えているのか。
紀伊国屋書店に聞いた。

「ポケットサイズの絵本の売り場に展示されている現状を分析しますと、いくつかのパターンに分けられます。1つは、通常サイズの絵本(売れ筋)を、ポケットサイズにしたもの。2つ目は、通常サイズの絵本のキャラクターを活かす形で、オリジナルのかたちでポケットサイズで刊行したもの。人気作家の場合もあります。
3つ目は、赤ちゃんや幼児向けとして、始めより固い紙で製作されたポケットサイズ絵本です」(店売総本部)
特に、3つ目に関しては「おもちゃのように、絵本を自分の手で扱え、見ることができる、お子さんの手の中に納まる点、持ち運びが便利な点により、二次的に同じタイトルを拡販できるという狙いが当初にはあったはずです。現在は、ポケットサイズから入られる、お客様もいらっしゃいます」と紀伊国屋担当者。

『ウォーリーをさがせ!』や『はらぺこあおむし』などは、コンスタントに売れているそうで、たとえば、『はらぺこあおむし(ポケット版 第二版)』(エリック・カ-ル/偕成社)の購入者に関して、2009年10月より昨日(5月24日)までの期間で分析すると、以下のようなデータが出ている。

(1)男女比: 女性 80.8%  男性 19.2%
(2)女性の年齢比: ~18歳 2.8% 19~29歳 28.8% 30~49歳 34.9% 50歳~ 14.3%
(3)男女合計の年齢比: ~18歳 9.0% 19~29歳 35.0% 30~49歳 41.6% 50歳~ 15.4% 
(【紀伊國屋書店調べ】)

データ上では19~49歳までが約8割となっているが、実際、「大人」に売れているのだろうか。
「エリック・カールのシリーズ」、「バーバパパ」、「五味太郎さんのシリーズ」などのポケット版を刊行している偕成社・編集担当者に聞いた。

「小さなサイズの絵本を当社が出しはじめたのは、1988年。
『はらぺこあおむし』が最初でした。もともとは子どもさんが読むときに、家で読むには問題ないものの、外出するときに大きな本は持ち運びに不便だということから、『もっと小さいのが欲しい』という要望があったんです。そこで、もともとの本とそっくりに、『お出かけ用』としてハンドバッグに入るサイズで作りました」
ところが、最初は「子どもの外出用」として作ったにもかかわらず、思わぬところから反響があったのだという。
「意外にも大人、特に若い女性からの反響が大きかったんですよ。『昔読んだあの本が、こんなに小さくなった!』『バーバパパが小さい本になってる! 中身は同じだよ』という驚きや、『小さくて可愛い』『オシャレ』などという声が多かったようです。そこで、大人の間で人気が出るようになり、近年は女性モノのグッズなどと一緒に置かれるようになってきて、さらに人気が高まっているようです」

大人のための絵本なども人気となっている昨今。
「子どもの頃に好きだった絵本のミニチュア版を手元に置いておきたい」と考える人も少なくないのか、ポケットサイズの絵本が好調です。
(田幸和歌子)