連休も間近に迫り、秋の行楽シーズンとなる。

ところで、牧場など、豊かな自然のところで飲む牛乳って、やたらと濃くて美味しいと思うことが多い。

こうした牛乳を味わってしまうと、市販の牛乳が薄く思えることすらあるけれど……。これって単に環境の違いによるもの?
社団法人日本乳業協会・消費者相談室に聞いた。

「牧場で飲んだ牛乳は、のどが渇いていたり、広々と開放的なところで飲むという環境的な違いはもちろんありますが、そのほかに“ホモジナイズ”されていないノンホモという理由があるかと思います」
ホモジナイズとは、どんなもの?
「ホモジナイズとは均質化のことで、実際には均質機を通すことで、生乳の脂肪球を細かくすることです」

搾ったままの生乳の脂肪球は、直径0.1~10マイクロメーターとバラつきがあるそうで、それを2マイクロメーター以下に細かくするのが「ホモジナイズ」なのだそうだ。
「脂肪球は軽いので、大きく上のほうに浮いてきてしまいます。そうすると、上のほうが、とろりとしたクリーム層の濃いもので、下が薄い状態になるんですよ」
一口目を「濃い! 美味しい!」と感じるのは、「上に浮いてきた脂肪球の多い部分」を飲んでいるということのよう。

では、なぜホモジナイズするかというと……。

「上のほうと下のほうの濃さが違ってしまわないように均質化するということと、脂肪球が小さくなることで、消化吸収が良くなるんですよ」

ちなみに、「最近の牛乳は薄い」とか「学校の給食の牛乳は普通の牛乳より薄い」などと言う人もいるが、厚労省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」により「種類別牛乳」には何も加えてはいけないことになっているため、薄めてあるということは当然ない。
むしろ酪農技術の進歩によって、昔より今のほうが乳成分は濃くなっているのだという。

とはいえ、種類別牛乳は、動物の乳をそのまましぼって殺菌しているだけのため、季節によって濃さに違いが出るというのは、過去のコネタでもご紹介した通り。
冬場の4.0%と他の季節の3.8%といった微妙な差は、実のところ敏感な人の舌でもそうそうわかるものではないようだが、それに比べて、明らかに濃さが違うと感じる「牧場の牛乳」と市販の牛乳。
ジャージー種やブラウンスイス種、ガーンジー種など、ホルスタイン種より乳量は少ないものの、濃い乳が出る種類の牛も一部いる。しかし、日本の9割以上を占めるのはホルスタイン種。
ホルスタイン種の場合は、実際には、市販の牛乳のほうは乳脂肪が均一になっているだけであって、薄いわけではないのだそうです
(田幸和歌子)