昔、ダウンタウンの漫才で「スプーンそんなに曲げたら、カレー屋さん怒ってくるやろ」と、あまりにも斬新な視点でスプーン曲げをぶった斬っていたのを覚えている。
実は、私も気になっていた。
あの後、あのスプーンたちはどうなっているのか? おそらく、普通に捨てられてるんだろうけども。

しかし、スプーン曲げもやりっ放しとは限らない。「ANTI SYSTEM(アンチ・システム)」を主催するアーティスト・VELO(ベロ)さんが製作した『サイキックマネークリップ』は、見ての通り。あえて説明すると、超能力者に“グニャリ”と曲げられたようなスプーンを、そのまんまマネークリップにしてみせたのだ。

素晴らしい。素晴らしい発想力。
どのようにして、こんなアイテムを思いついたのか? 本人に直接伺ってみた。
「友人からマネークリップを作ってほしいと言われたんです。私は“破壊からの再構築”をコンセプトに作品づくりに取り組んでいるんですが、簡単にはアイデアが浮かびませんでした。そんな時にバーで飲んでいると、友人が万札が挟まれたマネークリップをカウンターに投げ置いたんです。そのイヤらしさが、印象に残りました。そして『テーブルマナーとマネークリップを掛け合わせて作れないだろうか?』という考えに至ったんです」
テーブルと言えば、食器。
食器と言えば、スプーン。スプーンを曲げればマネークリップになる! そんなくだりが、VELOさんの中にあったみたいだ。

そして、念のために聞いてみた。このマネークリップは、どのように作っている? というか、スプーンをどうやって曲げているのか? それが知りたい。
「8割は腕力、1割は気合い、残り1割は極秘です」
“極秘”が気になるが、要するにVELOさんに特殊能力はなかった模様。

「発売前の3カ月ぐらいはリアルに超能力で曲げれないものかと、毎日2時間ぐらいスプーンと睨めっこしてました。
気功などの呼吸法で挑戦したり、ユリゲラーとかスプーン曲げの達人の動画を見て研究したり、メチャクチャ試行錯誤しました」
一度だけ捻じれかけた時があったそうだが、“気”を出し過ぎて体調を壊してしまったそう。結果、単純に“腕力”で曲げた方が効率が良いと判明はしたが、肩がやられて手の皮が剥けるので1日20本が限界。

そして、スプーンのチョイスにも注意が払われている。
「お金をポケットに入れるだけに、ある程度の重さが必要なんです。また、マネークリップには緩みやすいという難点があり、薄くて柔らかいものを使うとますます緩みやすくなってしまいます。ですので、ホテルやレストランで使われている硬くて重厚感のある高級カトラリーを仕入れています」
高級スプーンを強引に曲げることで、力強くお札をホールドするマネークリップが生まれるのだ。


そんなこの商品は、昨年の3月より発売されている。たぶん好事家ばかりが購入しているのだろう。反響も「レジのおばちゃんにツッコまれた」と、好事家から喜びの声ばかりが寄せられている。
その他、女性が男性へのプレゼントとして購入することも多いという。変わったところでは、スケートボーダーからも人気(スケボーで移動するのに財布は重くて邪魔だから)。もちろん、VELOさん御本人も使っている。


この『サイキックマネークリップ』は、「ANTI SYSTEM」ウェブサイトか、オンラインショップ「密買東京」で絶賛発売中。価格は2,100円(税込み)。

最後に、VELOさんが実際に行っているマネークリップ使用法をご紹介したい。
「財布とマネークリップを併用して使ってます。膨らむのが嫌なので、ポケットにはマネークリップに挟んだ必要最低限のお札とコインケースを。バッグにはストック分のお金とカード類を入れた財布を入れて持ち歩いてます。
財布ごとポケットに入れておくと、無くしたときに大変でしょ? カード止めたり、やること多いわりにめちゃくちゃヘコみますし……」
私も、マネークリップ童貞を捨ててみようかな。
(寺西ジャジューカ)