以前、住んでいた自宅に違和感があった。誰もいないはずの部屋なのに、くつろいでいると不思議な気配を感じるのだ。
次第に「泥棒でもいるのか?」と、気持ちの悪い恐怖を感じる毎日を送る始末で。もしかしたら、泥棒じゃない何かがいたのかもしれないな……。
気味が悪くてそこは引っ越したが、新居に移っても不安は消えない。それ以来、私には妙な癖がついてしまった。外出して、家に戻って、玄関を開けるのが怖い。「泥棒、いないよな?」と玄関を少しだけ開け、部屋の中をチラ見しながら恐る恐る入室。
そんな行動を欠かせなくなってしまっていたのだ。……というか、私の家なんだけど。

こう書いていてみると、あの頃は病んでたか? 無人の我が家にビビり過ぎ! でも、これがあればビビらない。「鈍渡技研電子工業」(兵庫県)が開発した『アンシーン』があれば、きっと安心させてくれる。
これは、室内に人がいるかどうか赤外線で検知してくれる装置。留守中の室内に不審者が侵入した場合、これを作動させておけばパソコンや携帯電話に通知が届くというサービスである。
事前にそういった情報がわかれば、対策の取りようもあるだろう。

上記は、“警備モード”と呼ばれる使用法。そして、他にも有意義な使い方がある。介護用品としての考え方だ。
この器具、4メートルの範囲内であれば体温がある物に反応し、少しの動きでも検知してくれるという。だからこそ、遠方にいるお年寄りの自宅内にこの『アンシーン』を設置すると安心。
装置がおじいちゃんおばあちゃんの動きを確認し、その情報は「安心メール」として1日1回、指定時間帯に契約者の携帯やパソコンへ送信されるのだ。
逆に、前回の検知から数時間(1時間単位で設定できる)センサーが検知しない場合。その時は、「異常事態発生」のメールが契約者に送信されるという。このお知らせで、生活者の異変を気づくというわけだ。例えば、寝たまま起きてこない状況になっていたり……。

それだけじゃない。
わかりやすく言うと“ナースコール”のような機能も果たしてくれる。
使用法は、まさにナースコール。生活者に何かがあった際、『アンシーン』に付いている緊急呼び出しボタンを押せば、契約者に異常がメールで伝わる。もし契約者が遠方にいて助けにいけない場合は、近所の人や自治会、もしくは民生委員に知らせて対応するなどして、何とか生活者をヘルプしてあげてほしい。

そんな『アンシーン』が生まれたきっかけについて、同社の鈍渡社長に伺ってみた。
「私の妻が5年前に他界しまして、3人いる子供も独立して実家には生活しておりません。
そしてある年の正月、みんなが集まった時に“孤独死”の話題になり『お父さんも心配だな……』と言われたんです。その時は、冗談で『メールで1日1回、みんなに“元気だよ”って送るよ』と返しました(笑)」
しかし、本当に毎日そんなメールを送るのは大変。そこで社長が個人的に作ろうと思った装置が、この『アンシーン』である。だが、完成品のあまりの出来の良さに「私が使うだけではもったいない!」と、この度の商品化と相成った模様。

でも、一つだけ疑問がある。もし家の中で動物を飼っている場合、誤って検知してしまわないのだろうか……?
「装置には、30センチほど離した形で上下にセンサーが付いており、この2つが同時に働かないと人間の検知とはなりません。
これでペット等による誤作動を低減します」(鈍渡社長)

そんな『アンシーン』は、やはり“親を心配する息子夫婦”からの反響が最も大きいとの事。他にも「近所で空き巣が多いから使いたい」といった声が寄せられている。
購入は、同社の専用サイトで受け付けられており、価格は本体が49,875円で、月額利用料は2,940円(ともに税込み)。

「“孤独死”は社会的な問題になっておりますから、当社でも商品化を決定いたしました」(鈍渡社長)
“警備モード”に、介護用。様々な用途で活躍する『アンシーン』で、私も安心したい。
(寺西ジャジューカ)