料理でデザート以外「甘い」概念があまりないヨーロッパ。イタリア人の台所でみりんを使い日本食を作った時、彼らはみりんを舐め「これアイスにかけるの?」と。
甘いドルチェはとことん甘くカステラに甘いリキュールをかけたがったり、蕎麦に味が足りないとフレーバーオイルをかけようとしたり。日本人には当たり前のモノも海外では通用しない。
日本食は人気だが捉えられ方は国さまざま。ヨーロッパ生活10年中から海外日本食事情をご紹介しよう。

▼ 日本人だって同じかも!?
上述のイタリア、昔は日本食はかなり高価で寿司デートはスペシャルだったが、今はだいぶ地元の人に定着している。毎月1度は刺身を食べる元同僚や、巻き寿司セットを愛用する友人、アジア雑貨やインテリアの店も増え、箸常備の家も少なくない。
しかし日本人がパスタ=スパゲッティとなるように、イタリア人にとって、海苔もわかめも昆布もみーんな「海草」のひとくくり。

ご存知だろうか。ペンネや細いカペッリーニくらいは日本でも知られているが、パスタには穴が開いているブカティーニや、耳たぶの形のオレキエッテ、詰め物をしたトルテリーニ・トルテローニ、実に多くの種類がある。日本での主流はスパゲッティなので、現地では決してスパゲッティで食べないソースもスパゲッティ使用にしてしまう。同様に外国でも勝手に日本のメニューがアレンジされている。ラーメンとあるのにうどんが出てきた時はびっくり! 漫画の影響で「すする麺」が人気だが、彼らにとってうどんもラーメンも蕎麦も大差ないようだ。


▼ 正しい日本食とは?
パリのある日本食レストランでは、どう見てもオイルで炒めた洋風マッシュルームが味噌汁の具に。ビールも醤油も日本メーカー、店内装飾もかなり日本に近いのに、日本人シェフは1人もいなかった。オランダで現地の友人からチェックして欲しいといわれた新しい日本食レストランはどう見てもチャイニーズ。日本人と他のアジアの区別がつかない現地人もいっぱいいる。初めてそこで日本食を食べた人達が、日本食を誤解しないように願う。

▼ 惜しい!? 日本食
日本人観光客も多いウィーン。
小澤征爾ご一行もよく泊まるらしい某星付きホテルで味噌汁のダシが皆無だった!おかめ納豆も和風コーナーに常備されているのに残念すぎ、キッチンにお伝えすると連泊翌日わざわざテーブルにシェフが来て「今日は味噌汁の“ブイヨン”は大丈夫でしたか?」と。ルーマニア首都ブカレストのやはり星付きホテル内にある有名日本食チェーン店で同じことがあったが、ウィーンとルーマニア、日本食の浸透度が違うだけに、このダシなし味噌汁はちょっとした事件だった(笑)。

▼ ヨーロッパで感動したお寿司は?
要改善の日本食例が多いが、ポルトガルの海の街・カスカイスの寿司は高評価だった。いかにも海の家、VIVAビーチ★のテラス席に、とってつけたようなさくらの音楽。ねじり鉢巻ならぬ普通の鉢巻の職人さん。全く期待していなかったが、ネタの新鮮度は抜群、シャリもなかなか。
南米で修行をした職人さんで、握り方の身振りが大袈裟だったが美味しければ問題ない。海外での日本食、カリフォルニアロールのようにその国ならではのアレンジもしつつ、基礎を抑えればいいのかな。形にこだわり過ぎず、でもこだわるポイントは譲らずに!

▼ 日本食ビギナーに評判が良かったものは?
しょうが焼きと親子丼。しょうがは中国食材店などで手に入れば良いが、なければしょうがチューブ持参で。親子丼も、あのたまごの甘さが新鮮らしい。日本食を食べての反応も国・人さまざま。

予想外の出来事にめげず、是非美味しい日本食を海外で見つけ、作ってみましょう!
(川上・L・れい子)