今フランスは失業率が約9%の水準で動いている。日本の4%台と比べると倍の数値だ。
しかし国による失業保険制度は日本より手厚い。もしフランスで働いていて失業した場合、どれだけの金額がもらえるのだろうか。失業した場合の手続きを順に追ってみた。

一般的にフランスで失業保険制度にあたるのが、雇用復帰支援手当(Allocation d'aide au retour a l'emploi)というもの。この1日あたりの支給額の計算方法は2通りある。

一つは「前職の月額賃金を30日で割った額の40.4%に11.34ユーロを加えた額」。
もう一方は「前職の月額賃金 を30日で割った57.4%の額」。両者を計算して、高い金額が適用される。給付の上限と下限も決められていて、上限は「前職の月額賃金を30日で割った額の75%」を超えないこと。下限は27.66ユーロだ。

しかし誰でも申請すれば、これらをもらえるわけではない。民間企業で働く50歳未満の人の場合は離職する前28カ月の間、50歳以上の人の場合は離職の前36カ月の間、それぞれ制度に加入していた期間が122日以上、もしくはすべての労働時間が610時間以上あることが必要だ。


自らの都合による退職や、身体的に職業に就く能力があるもの、年金を受給できる年齢だと支払われないが、満額支給に必要な期間に達していない場合は、それが満たされるまで支払われる。手当をもらえる期間は加入していた期間と同じ長さ。しかし上限があり、50歳未満で730日、50歳以上で1095日以下だ。これら条件はフルタイムの労働者だけでなく、派遣やパートタイムの人も含まれている。

これら給付をもらうには、まず公共職業安定所(Pole emploi)に登録せねばならない。そこで病気など特別な理由なく、すぐに働けると判断された人は、職安との面談を介して職業訓練などを含む就職支援の参考となる就職計画が作られる。
この計画に基づいて職安は再就職の提案をしていくが、登録者が職安からの求人を2回拒否したり職安の利用を拒むと、手当の支払いは止められる。

この給付期間が終わってもなお失業中の場合は、特別連帯手当(Allocation de solidarite specifique)という制度も存在する。

この手当を受け取るには65歳未満であり、そのうち60歳以上の人は年金の満額受給期間に満たないことが求められる。もちろん職安に登録して就職活動を怠らず続けている人が対象だ。加えて、失業以前の10年間に5年以上は就業しており、失業中に雇用支援手当が支払われていた人が対象となる。

ただし育児が理由で仕事から離れた場合は、子供1人につき1年間、3年を上限に5年の期間を短くできる。
月収に関しても、申請をした時点で雇用復帰手当(1日あたり)の70倍(単身世帯の場合)、もしくは110倍(法的なパートナーがいる世帯の場合)以下でないといけない。適用期間はもっとも長くて6ヶ月だが、上記の条件に引き続き当てはまっていれば、何度でも更新できる。

このような手厚い制度が設けられているが、フランスの公共部門は硬直していることが多い上に、実情は色々と異なるという。仏企業の人事関係者によれば、まず職種によって職安の使い方が変わってくるそうだ。

ブルーカラーの場合、その求人の多くは職安に集まり、企業も人材をそこで見つけようとする。しかしホワイトカラーの場合、職安で職を探そうと思っている人は多くなく、人材紹介業者と連絡を取ったり、インターネットを通して探す人が多い。
よって企業側も、採用するポジションにより職安と人材紹介会社を使い分けているそうだ。

また本当に手当が必要な人がいる一方で、手厚い制度(50歳未満2年間、50歳以上3年間)に乗じて、急いで職を探そうとしない人も多い。1年目は休暇に当てて、2年目からようやく本格的な再就職を始めるという人も少なくないという。

社会保障には、もちろん税金による負担がともなっている。これら是非は、人により意見の分かれるところだろう。
(加藤亨延)