「事故物件」とは、そこで人が亡くなった過去のある部屋のこと。霊感がなくても、何も問題がなくても、住むのはちょっと怖いと思う方は少なくないでしょう。
設計図のとおりに施行されていない「欠陥住宅」なども近年問題になっていますが、このように買い主が知り得ない情報が多いのが不動産契約の怖いところ。賃貸なら何とか引っ越せば済む話ですが、購入の場合、そう簡単には引っ越せないのが普通ですよね。問題のある物件に当たらないためには、事前に何ができるのか。エキサイト不動産でサービスを展開中の不動産売却専門サービス「売却のミカタ」を運営する(株)不動産仲介透明化フォーラムの風戸裕樹社長に、そのあたりを伺ってきました。

平気な人もいる!? 「事故物件」は事前調査を

風戸氏によると、現在は「事故の次の次の入居者」になれば報告しない慣習があるため、まったく知らずに住んでいた……なんて事態が起こることは、やはりあるそうです。損害賠償を求めて訴えた場合、「心理的瑕疵(かし)に当たるかどうか(精神的にどれだけ苦しめられたか)」という争点になりますが、口頭でも事前に説明があったかどうか、そこに住んでどれだけ嫌な思いをしたかを証明することの難しさは、何となく想像できますよね。


こう考えると、事故物件かどうか気になる人は、やはり事前に一度確かめておくのが確実。極端に値段が安い場合などは、その理由を隣室や近所の住人、または担当者に率直に確認してみるのも1つの手ですが、まずはインターネット上の情報を探ってみるのが、現状では一番手っ取り早い方法かもしれないですね、とのことでした。日本各地の事故物件を詳細に取り上げた個人サイトも有名になっています。

また、個人的に気になっていたのが、「入居者が部屋で亡くなると、発見までに床などがいちじるしく傷んでいることもあるのでは?」という点。確かに数ヶ月など放置されるとダメージが大きい物件もあるものの、そうした部屋をそのまま貸していることはない様子。死後すぐに発見されている場合であれば、部屋自体にはそれほど損傷がないものも多いそうです。


ただ、「霊なんて信じない」「人は皆死ぬもの。自然なことだ」と考える人にとっては、事故物件は逆に格安な穴場の物件と捉えられることもあるようです。風戸氏によると、事前に事故物件だと分かっていても借りるのは、圧倒的に「女性」に多いのだとか。後から知っても特に驚かず、退去を希望しない人もいるそうです。また職業柄、「死」に向かい合っているお医者さんなども、あまり気にしない人が多いようです、とのことでした。

欠陥住宅対策に、「瑕疵(かし)保証」は役立つの?
続いて、購入物件に「欠陥」があった場合について。
最近では、押切もえさんがプロデュースしたマンションの外壁にトラブルがあり、ちょっとした騒動になっていましたね(デザイン重視で使用した外壁の大理石が、完成後わずか1年半で変色し、苦情が殺到)。
こうした入居後のトラブルや、近年の欠陥住宅問題の対応策として、「購入後、何か物件に欠陥があると分かったときには無償で直しますよ」というアフターサービス(=「瑕疵保証」)を有料で提供する不動産会社が最近は増えてきているようです。風戸氏が運営するサービス「売却のミカタ」でも多くの要望を受け、このサービスの提供を始めたそうですが、しかしながら、「マンション」の購入に関してはこの保証はそれほど意味がないかもしれない、という持論を語ってくれました。

というのも、最近の新築(鉄筋)のマンションに関して、瑕疵保証が役立つようなトラブルは、ほとんど起こっていないのだとか。その理由として、(1)瑕疵保証はあくまで自分の部屋まわりの「占有部分」のみの適応であること、そして(2)保証期間も入居後1年程度(中古住宅の場合は3ヶ月)と短いのが一般的だからだそうです。風戸氏が過去知るなかで瑕疵保証が役立ったトラブルは、「給排水管の故障」というたった1件だったそう。
押切さんのようなトラブルは本当に稀であり、そもそも外壁などはマンションの「共用部分」に当たるので、入居者個人の瑕疵保証の適応範囲外になってしまいます。
現状、瑕疵保証は購入者の精神的な気休め(リスクヘッジ)にしかなっていないケースも少なくない様子。自分にとって本当に必要な保証かどうか、購入前によく検討してみてください、とのことでした。

中古物件には、「インスペクター制度」も利用可
また、「中古物件」を購入したい場合においては、「住宅劣化の程度を事前に知っておきたい」と考える人は多いかもしれません。各所の劣化の具合や、何年後にはどこを直す必要があるか、全体としては残り何年くらい住めるのか、どこか細部に欠陥はないか……などなど、新築物件よりも気になる点が多くあるはず。そうした人に向けて、最近では「インスペクター制度」というのも登場しています。
その住宅の工法に精通した専門家が、不動産会社とは関係のない第三者の立場から「住宅診断(ホームインスペクション)」、つまりその建物を調査してくれるサービスです。欧米では既に浸透したサービスですが、日本でも近年注目され始め、国交省からもガイドラインが公表されています。

風戸氏によれば、インスペクター制度の利用がおすすめなのは、「一戸建の中古物件」だそうです。この場合、費用(5-7万円程度が主流)を割いてでも利用価値はあるだろう、ということでしたが、中古マンションに関しては、費用対効果を考えるとあまり有効ではないかもしれない……とも語っていました。一戸建ての場合は、屋根裏から床下まで確認しておきたいポイントが沢山ありますが、マンションの場合、入居者の権利が及ぶ範囲は、あくまでその部屋まわりの「専有部分」のみ。自分の目で確認するのと、不動産会社から得られる情報で十分な場合もあると思います、とのことでした。


「瑕疵(かし)保証」「インスペクター制度」など初めて聞く名前もあり、今後に知っておきたい情報が満点の取材でした。何も知らずに事故物件や欠陥住宅に住んでいた、なんてことにならないために、皆さんもぜひ覚えておきましょう!

●売却のミカタ
「売却のミカタ」は、株式会社不動産仲介透明化フォーラムが2010年7月に開始した不動産売却専門サービス。サービス開始後3年間で1,500件以上の売却相談、450件以上の売却を受託。また、相場よりも平均して500万円高い売却実績をあげている。(マンション時価算定サイト「住まいサーフィン」調べ)