飛行機はいくらで買える!? 『これだけは知りたい旅客機の疑問100』
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お盆休みも始まり、飛行機に乗って帰省や旅行をしている人は大勢いるだろう。
いまや移動の一手段として当たり前のように使われている飛行機だが、案外、基本的なことが知られていなかったりする。


「旅客機もガソリンで飛ぶの?」「飛行機は一機いくらするの?」――自動車なら簡単に答えられそうな質問も、対象が飛行機となると、なんだか難しい。

だが、そんな素朴な疑問に答えてくれる一冊がある。今年7月に発売された『これだけは知りたい旅客機の疑問100』。著者は作家で航空ジャーナリストの秋本俊二さんだ。
飛行機はいくらで買える!? 『これだけは知りたい旅客機の疑問100』
『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンス・アイ新書/1188円税込)。すでに台湾での翻訳出版も決まっている

前述の質問の答えも掲載されている。
飛行機の燃料は車と同じガソリンではなく、ケロシン(灯油の一種)。

飛行機の値段は機種によって違うが、数百億円はくだらない。機種ごとの定価やエアバスとボーイングのどちらが高いのか? などの詳細はぜひ本でチェックしてほしい。

本書には素朴な疑問から少しマニアックな疑問まで、タイトルのとおり、100の疑問と回答が掲載されている。“ドリームライナー”787や政府専用機の話から、機内食やエコノミークラス症候群のような身近なネタまで幅広く、旅客機好きから旅好きまで、また子供から大人まで楽しめる。なかには「昔は着物姿のCAが飛んでいた」「機内でもシャワーを浴びられる」なんてウソのようなホントの話もあり、読めばつい誰かに話したくなってしまうはず。

『旅客機の疑問』シリーズの5冊目にあたる本書は、いわば集大成ともいえる一冊。
2007年のシリーズ開始から約8年が経ち、この間に航空の世界も大きく様変わりしたようだ。著者の秋本さんに話を聞いた。

2007年以降、航空の世界はどう変わった?


「一番変わったのは、2007年には誕生していなかった新しい飛行機がどんどん世界の空でデビューしたこと。エアバスの総2階建て機A380も、ボーイングの次世代機787も、最初の本ではまだ“開発中”としか書けなかったのが、すでに世界中の空を飛び始めています。当時はまだ“構想”の段階だったエアバスA350XWBも、2014年12月にデビューしました。日本人の多くの期待を背負った国産ジェット旅客機、MRJも試験機が完成し、まもなく初フライトを行います」(秋本さん)
新著では、それら最新の機種について、実際の写真を使っていろんな角度から具体的に解説されている。

飛行機はいくらで買える!? 『これだけは知りたい旅客機の疑問100』
製造が進むMRJ(三菱リージョナルジェット)(『これだけは知りたい旅客機の疑問100』より)

機内食づくりの舞台裏やWi-Fi体験談も


そんな進化の一方で、昔から飛行機初心者が抱きがちな、いわば定番ともいえる疑問もある。
「以前から変わらず届く質問のひとつが、旅客機の安全に関すること。
カミナリが落ちても平気なのか? 濃霧の中でも安全に着陸できるのはなぜ? それらの質問には、前著よりもよりやさしく、わかりやすく解説したつもりです」(秋本さん)

このほか、空の旅をもっともっと楽しみたいという気持ちからくる質問も多いという。たとえば「機内食はどんなふうに作られるのか?」「雲の上でメールをやりとりできるって本当か?」といったものだ。

飛行機はいくらで買える!? 『これだけは知りたい旅客機の疑問100』
機内食づくりの舞台裏。実は手作業が意外に多い(『これだけは知りたい旅客機の疑問100』より)

「機内食については、その舞台裏を解説するだけでなく、人間の味覚は上空1万メートルでどう変わるのか、といった項目も加えて、より詳しく書きました。機内Wi-Fiなども、単なる仕組みの解説でなく、私が実際に使ってみての体験談も交えてレポートしています」(秋本さん)
飛行機はいくらで買える!? 『これだけは知りたい旅客機の疑問100』
JALのニューヨーク線で体験した機内Wi-Fi。気になる使用感は!?(『これだけは知りたい旅客機の疑問100』より)

旅は空港から始まる


「海外を旅する場合、目的地──たとえばパリならパリに着かないと旅が始まらない、そう考えている人がまだけっこういます。でも、それではもったいない。空港のゲートをくぐった瞬間から、もっと言うと、空港に到着した瞬間から、旅は始まる。
そういうふうに旅をとらえると、楽しみは倍増します。空港に到着して、ふと“なぜ?”と不思議に思うこと。機内に入って“これはなに?”と感じること。それら、誰もが抱く疑問を、本書では多くの写真を使いながら、専門用語は排除し、初心者向けに一つひとつやさしく解説しました。本書を旅のお伴に連れていってもらうことで、旅客機の世界が知れば知るほど楽しさであふれていることを、感じ取ってもらえるといいなあと思います」(秋本さん)

読めば空の旅がもっと楽しくなる一冊。この夏の空旅のお供に、ぜひ。

(古屋江美子)