以前、コネタで「日本ツインテール協会」なる団体を取材したことがあります。同協会がツインテールを世に普及させるべく大々的に起用したモデルの一人が、今をときめく佐野ひなこでした。

彼女の魅力が凄いのは言うまでもないですが、ツインテールの破壊力も彼女のブレイクに手助けしていると信じたいです。

というわけで、今回もツインテールものを。といっても、今回は変化球で行きましょう。アイデアグッズブランド「BIBI LAB(ビビラボ)」が10月より発売している、その名も『大正義ツインテールまくら』(税別1万5600円)を見てください。

「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

ツインテールに見えますか? 見えなくもない。そのつもりで見たらそう見える……かもしれない。
このまくらに頭を乗せ、しっぽり挟まれたら、おぼろげながらツインテールにした女の子です。

ところで、そもそも、なぜ抱きまくらをツインテールの形状にしなきゃならないのか? あまりにも唐突なので、理由を聞いてみました。
「もともと、こうした二股の抱きまくらは欧米で妊婦向けクッションとして使われていました。日本にもありますが、やはりほとんどが妊婦向けと謳われています。でも私は男性で身近に妊婦さんがいないので、何が妊婦向けなのか理解できませんでした。ただ、『ベッドとマットレスの間など、狭い空間に手足をねじ込みたくなるクセがある人』にはウケると直感しました。
巨大な二つのクッションで全身を挟み込んでしまえば、安心感に包まれて熟睡できるのでは……と考えたのです」(担当者の川瀬ハヤトさん)
ならば、発信方法を一新させる必要がある。これを変えないと、イメージは従来の「妊婦向け」のままなのだから。
「そこで"かわいい女の子"を連想させる商品名を使い、男性にアピールすることを思い付いたんです」(川瀬さん)

実は同ブランド、ツインテールをモチーフとした抱きまくらの発売は今回が初ではありません。コの字型で自在に変形する『ツインテール挟まれ枕』(税別8800円)を、昨年に発売しています。
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

「前バージョン発売時は、そのネーミングとデザインのギャップから『ツインテール違い』、『名称詐欺』、『こんなのツインテールじゃない!』と、全国のツインテールファンから非難を浴びてしまいました。形状がもっさりし過ぎてて、"かわいいツインテールの女の子"を連想しにくかったようです。
個人的には、『ツインテールにこだわりを持つ人々がこんなにたくさんいるんだ』と実感できたことの方が収穫でした」(川瀬さん)

そんなすったもんだを経て、前回の反省点にしっかり対応し完成させたのが、今回の『大正義ツインテールまくら』です。
「今回は"かわいいツインテールの女の子"のヘアスタイルをトレースしてシルエットを改善しました。ヘアカラーにもこだわり、定番の黒髪(冬用)、根強いファンが多い青緑(夏用)と2枚の着せ替えカバーを付属させています。商品名の『大正義』とは、『今回こそ本物のツインテールだよ!』とメッセージを込めたものです」(川瀬さん)
なるほど。では、そのつもりでもう一度『大正義ツインテールまくら』を見てみましょうか。……う~ん。

「ツインテールを追い求めるうちに、抱きまくらを超えて"クッション要塞"のようになってしまいました」(川瀬さん)
失敗を自白してどうする。かわいそうなので、ツッコミはこの辺にしておきましょうか。

もちろん、ブラッシュアップされたのはフォルムだけではない。抱いたり挟まれたりするテール部分には柔らかい綿を、頭を預けるヘッド部分にはフィット感を高めるべくマイクロビーズを採用しています。この仕様で「頭は固定されたまま、身体はやさしく挟まれる」という体験が可能になるのです。
またカバーのヘッド部分の「ぱっつん前髪」機能を活用すれば、アイマスクのように顔をすっぽり隠して安眠環境を作ることができます。

「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方


ちなみに同ブランド、今回は妙なプロモーション法を試みている模様。
「多彩な挟まれ方を指南する『抱きの十手(いだきのじって)』を開発し、実用性を提案しています」(川瀬さん)
なんなの、それは!? こんな十手らしいです。まずは、「十手」の上を行く「奥義」から。

奥義


●眠りの十字架
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

片方のテールを両足で抱き込み、もう片方のテールで上半身を挟み込む。最後にぱっつん前髪で顔を隠して完成。「抱いて、挟まれ、隠される」コンセプトすべてを満たす究極の安眠スタイル、眠りの十字架で今夜もぐっすり。

●天馬の蹴上げ
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

『大正義ツインテールまくら』を逆方向に。
膝をヘッドに乗せて足を高く上げ、ツインテールで上半身を挟み込む。疲れてむくんだ足のリラックスには、この「天馬の蹴上げ」がおすすめ。

●布団ぐらしの読書王
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

ツインテールを閉じ、等身大のベッド型クッションにできる。硬いフローリングの上でも快適に読書やスマホゲーを楽しむことができる。

では、ここから「抱きの十手」の紹介です。

初伝


●三川横ばさみ
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●三川縦ばさみ
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●夢見百景
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方


中伝



●巻き腰電脳卓
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●一枚岩
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●初恋ひねり込み
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●方抱き頭岩
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

免許皆伝


●つばめ返し
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●出会い頭
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方

●壁立ちぬ
「四十八手」ならぬ「抱きの十手」 抱きまくらの"実用的"な使い方


「すべて弊社で考案しました。自宅にサンプルを持ち帰り、一ヶ月ほど様々な抱き方・挟まれ方を試した結果です。階級は習得難易度別に分けています。すべて和風の名称です。よく『四十八手』と言われるんですが、違います」(川瀬さん)
正しい由来は、「佐々木小次郎」だそう。免許皆伝の「つばめ返し」は彼の剣技から取っているし、他の技に関しても同様の世界観で次々とネーミングされていった模様。
「まず試していただきたいのが、『つばめ返し』です。抱きしめながら、挟み込まれる。狭いところが大好きな"ネコ型人間"と相性の良い一手ですね」(川瀬さん)
それにしても、「壁立ちぬ」だけは看過できない。抱きまくらのプロモーションとして、いかがなものか。
「アイデアがなくなってどうしようかと壁にもたれていた時に、もうこれでいいやと。もはや寝てすらいない斬新な一手となっています」(川瀬さん)
そんな、開き直られても。邪道ではないのか。

そんな『大正義ツインテールまくら』には、続々と反響が寄せられています。
「前回以上に『コレジャナイ!』の批判が増えました。非常に残念です。落胆しています。次はどうしようかと、途方に暮れています。ただ、お一人だけ『これ使いながら某ツインテールラノベを読むんだ!』というお言葉をくださいました。価値観が共有できる一部の方のために、今後も斬新な商品をご提案し続けていきたいと考えています」(川瀬さん)

とにかく、がんばってください。疲れたその時は、「壁立ちぬ」の体勢で睡眠をとればいいし。できるものならば。
(寺西ジャジューカ)