「BIJINCURRYカレンダー」はその名の通り美人とカレーがコラボした写真のカレンダーだ。2011年版が発行されて以来、登場した女性はのべ72組。
これまでの作品を使用したトランプも作成された。カレンダーの写真を撮り続ける写真家の伊藤菜々子さんには撮影の流儀があるようで、企画を立ち上げた「Cafe & Curry Buttah(ボタ)」のオーナー、川崎誠二さんと共に話を伺った。

美人とカレーの珍しいコラボ


美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」2016年版より(撮影 伊藤菜々子)

そもそも「BIJINCURRYカレンダー」はなぜ誕生したのかというと、関西限定のファッション誌「カジカジ」(休刊)で「ボタ」のオーナーの川崎さんが「何かやりませんか?」と相談されたことがきっかけだった。川崎さんは普通に文章を書いてもいいが、それよりも写真に関する変わった企画をやりたいとのことで、知り合いのカメラマンで、新聞、雑誌、広告などで幅広く活躍中の伊藤さんに話をしたことで企画がスタートした。(きっかけ等は、当ニュースサイトで以前に紹介したことがある)

美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」2016年版より(撮影 伊藤菜々子)

登場するモデルはプロのモデルではなく、本格的に撮影されるのは初めてという女性ばかりだ。プロのモデルはカメラマンが指示を出さなくてもポーズをとってくれるが、BIJINCURRYカレンダーの撮影ではそうはいかない。

――撮られ慣れてない人にとっては、いきなり「ポーズを」といっても難しいですよねえ~
伊藤さん「そうなんです。
中には撮られることに積極的な人もいますが、BIJINCURRYカレンダーの撮影時は、一緒にイチから作品を作り上げていく感覚を大切にしています。『どのようにすればより美しく見せることができるか』を一緒に考え、例えばポーズを変える前と変えた後を比較したりしつつ、作品を作り上げていきます。腕の位置や顔の角度をほんの少し変えるだけで印象はグッと変わりますから。こうしたコミュニケーションがまた楽しいんです」
撮影する側から一方的に指示を出すのではなく「一緒に作品を作り上げる感覚」が大事だと伊藤さんは強調していた。一緒に対等な立場で考えていくうちに、最初は露出を控えめにしていた人が『綺麗に見られるなら』と徐々に露出していくケースもあるとか。
「あくまでも目的は美しく撮ることであって、肌をあらわにするのが目的ではないんですけど、中途半端に隠そうとすると逆にいやらしく見えてしまう。
女性が見て美しい、いやらしさを通り越してかっこいいと思ってもらえたらいいなと思っています」
美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」2016年版より(撮影 伊藤菜々子)

――プロのモデルを起用しないのは理由があるんですか?
「慣れてないからこそ、プロのモデルには出せない味が出るんです。お互いに頑張らないと良い作品ができないところにも醍醐味があります」
伊藤さんは相手の不安を解消すべく、事前に一緒に飲みに行くこともあるそうだ。
「仲良くなって、撮影が終わってからも飲みに行くことがあります(笑)」
美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」※こちらの写真はトランプに封入(撮影 伊藤菜々子)

シチュエーションも伊藤さんが考える。理想は見た時にどこか違和感がある写真や、考えどころがある写真とのこと。
「といっても、ベッドの横にカレーが置いてある状況自体、違和感があるんですけどね。あまり置くような状況がありませんし(笑)」
美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」※こちらの写真はトランプに封入(撮影 伊藤菜々子)

美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」※こちらの写真はトランプに封入(撮影 伊藤菜々子)

――撮影にかける時間はどのくらいですか?
「その時によって違いますが、1時間を目安にしています。
なぜ1時間なのかというと、1時間って、緊張感が抜けてくる頃なんです。最初はカタかった人も慣れてきて、気を抜き始めた瞬間に良い表情の写真が撮れるんです。撮影時間中に相手の緊張を崩していく面白さと、相手の表情が変わっていく姿を感じる面白さがあるんです」

オーナーは伊藤さんにお任せ


美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
「BIJIN CURRYカレンダー」※こちらの写真はトランプに封入(撮影 伊藤菜々子)

一方、オーナーの川崎さんはモデルの選定にも撮影にも一切関わっていない。全て伊藤さんが一人で手がけている。
「男性が現場にいると相手が緊張しちゃうんで、オーナーは近寄らせません(笑)。モデルさんが着るファッションのことも考えるので、お店で気になる洋服を見つけると撮影用に買ってストックしておくんです。
撮影の場所は相手の家だったり、お店の一角だったり。楽しいけど、実は準備することが多くて結構大変なんです(笑)」(伊藤さん)
「僕は出来上がった写真を伊藤さんに見せてもらって『いいね~! 今年も綺麗だね~』って感動しています」(川崎さん)

――ちなみに、オーナーの川崎さんの好きなタイプは?
「『カナコさん』です」
――「カナコさん」?
「偶然、3年連続で『カナコ』という名前の子がいまして、それぞれ人物は違うんですけど、みなさん綺麗で、カナコという名前の子が気になってます。子どもができたら名前はカナコにしようかと(笑)」
ここだけの話、「BIJINCURRYカレンダー」には隠れ(?)ファンも多く、スチャダラパーのANIさんを始め、毎年のように心待ちにしてくれている人もいるそうだ。

美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
▲オーナーの川崎さん(左)とカメラマンの伊藤さん

オーナーの川崎さんが伊藤さんに全てを任せているところも微笑ましい。どこか品のある写真の数々は、伊藤さんの丁寧な作品作りの賜物なのであった。
(取材・文/やきそばかおる)


●「BIJINCURRYカレンダー」問い合わせ
美人とカレーのカレンダー、5年で72組撮影した伊藤菜々子の流儀
▲オーナーの川崎さん(左)とカメラマンの伊藤さん

Cafe & Curry Buttah(ボタ)
大阪市中央区東心斎橋1-8-20 
12 : 00~0: 00(定休日 水曜)
購入方法ほか詳細はこちらへ。
(カレンダーは数量限定)
川崎さんによると、地方の方からの購入も多いとのこと。「出張で大阪に来たついでにお店に寄って買っていかれる方もいらっしゃいます」
ちなみに「ボタ」の一番人気は「バターチキンカリー」(850円)。ハッキリいって、うまいです。

伊藤菜々子さん(カメラマン)プロフィール
1984年大阪生まれ
2008年独立後、新聞、雑誌、広告などで活動中
2010年よりBIJINCURRYをスタート。以後毎年カレンダーを制作
朝日新聞写真コラム「瞬間のカケラ」連載中