先日、福岡へ行く機会があった。その少し前に福岡に旅行に出かけてきた友人がいたので「どこか美味しいお店あった?」と聞いてみたところ「絶対に『今屋のハンバーガー』を食べて! 絶対に! 絶対驚くから!」とすごい勢いで返された。


「今屋のハンバーガー」は福岡市中央区の「西公園」という公園内にあるお店で、71歳の店主が一人でやっているという。そしてそのハンバーガーは、友人の“ハンバーガー観”を根底からくつがえすほどの美味しさだったとのこと。「とにかく食べて! 食べたらすぐに美味しかったかどうか電話して!」とハイテンションに迫ってくる友人の様子にただならぬものを感じ、福岡に着くなり行ってみようと決意した。

お店の前には「全国三位に入りました。」という立て看板


私が福岡についた日は朝から雨模様で、昼になって少し落ち着いたかと思えば時おり小雨が降る。そんな中、「西公園」に向かう。地下鉄・大濠公園駅近くの住宅街から坂道をのぼって15分ほど。高台にある自然豊かな公園だ。


中央展望広場に着いてみると、それらしき屋台が見えた。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

しかし、広場には駆け回って遊ぶ猫たちの姿と、展望台からの景色を見に来たらしき人の姿がちらほらとあるばかり。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

「今屋のハンバーガー」は雨天には休業するらしく、今朝からの雨で今日はお休みとなったらしかった。取材時には雨が止んでいたので、少しだけ展望台からの景色を眺めて帰ることにした。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

翌朝も小雨模様。今日もダメかな、と半ば諦めつつも行ってみると、閉めきられた店内からラジオの音がかすかに聞こえ、昨日は出ていなかった「今屋のホットドッグ 全国三位に入りました。」という立て看板が。

71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

お店の横にまわると、これも昨日は無かったメニューサンプルなんかも出ていて、今日はどうやら食べられるのかも。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

時刻は朝9時45分。10時オープンだと聞いていたが……ぼーっと立っていると、ふいに一人の男性がバイクに乗って現れた!
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

この方こそ「今屋のハンバーガー」の店主・今崎勝美さんである(今崎の“今”の字を取って「今屋」の屋号としたのだという)。「ごめんねぇー! 仕込みしてたんでねぇ。すぐ開けますから」
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

と、開店の準備を始め、しばらくしていよいよお店がオープン!
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった


創業40年 ホットドッグのような形のハンバーガー


「今屋のハンバーガー」で提供されるのは“ハンバーガー”とはいうものの、ホットドッグのような横長の形状のパンにジューシーなハンバーグを挟んだもの。ハンバーガー350円、ミックスバーガー400円、チーズバーガー400円、ミックス・エッグ450円という価格で、コーヒーなどのサイドメニューもある。

71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

「ミックスバーガー」をオーダーし、調理の合間に店主の今崎さんにお話を伺った。

――このお店はいつからやっているんですか?

「40年やっていますよ。昔はあちこち移動販売していたけど」

お店の外観からも分かる通り、移動販売車をそのまま固定してお店にしている。

――おいくつの頃から始めたんでしょうか?

「30歳ぐらいの時ですよ。友達が(ハンバーガーの移動販売を)しよったけん、それで教えてもらったんですよ」
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

――その頃はハンバーガーって珍しいものだったんじゃないですか?

「そうです。ハンバーガーやホットドッグは珍しかった。
マックやらなんやらなかったけん、めちゃくちゃ売れよった。マズかろうがうまかろうが、なんもせんでもよう売れよった(笑)今はマズいものなんっていったら誰も食べはせん。今は美味しくないと売れんでしょう。マックもあるし。美味しくせんとですね、だめですね。ボリュームをつけて。
ここは特に山の上でしょう、ボリュームをつけて満足してもらわないと、また食べようとあがってこないですよ。だけん大変ですよ。何回も来てもらわな。ハハハ」
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった


――すごく美味しいって評判だと聞きました。

「特に味付けは凝ってないですよ。今はハンバーガーもウインナーもどこもできあいのものを使うでしょ。
インスタントの。私のところは全部自分で作って焼くから、そういうところで味が違ってくるんでしょうね」

パンは近くの「唐人ベーカリー」のものを長年仕入れていて、お肉も馴染みの肉屋さんから一貫して仕入れているのだとか。「肉の味が重要ですのでね。安いの使うと味が変わってしまうけん」とのこと。

ちなみに店の前に立っていた「全国三位に入りました。」という立て看板は、2007年8月に発売された「カーセンサーエッジ」という雑誌に「カリスマハンバーガーブロガーに聞いたMyベストバーガー」という特集があり、その中で、「新・ハンバーガー愛好会」というブログの著者が「今屋のハンバーガー」を第3位に選んだのを受けて立てられたもの。雑誌の誌面をプリントしたものもお店に貼ってある。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった


――ボリュームがあって手作りで、350円とか400円ぐらいっていうのはお安い値段ですね。

「そうですかね。安いと言う人もおるし、言わん人もおる(笑) うちは手間がかかるから、普通のホットドッグ屋さんより時間かかるしですね。大変です。パッとできんので。よそは生野菜が多いけど、うちは炒め野菜で、そういうので時間がかかるんですよ。ケチャップも手作りです。今日のは少し甘かったかもしれん」

実際、作っているところ見せていただいていると、パンに炒め野菜を挟んでオーブンで焼き、一度取り出して、鉄板で焼いたハンバーグとウインナーを挟んで再度オーブンで焼き、とすごく丁寧に作っているのがわかる。

「もうすぐできますよぉー」と、いよいよ出てきたのがこちら。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

これは同行の友人がオーダーした「ミックスチーズ」。
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

ご覧の通り、かなり重量感がある。「ミックスバーガー」には炒め野菜の上にハンバーグとウインナーを乗せたもの。「ミックスチーズ」はそこにさらにチーズを挟んだもの。ぎっしり詰まった炒め野菜は細かく切ったキャベツに、そぼろ肉が混ぜ込んであり、ほんのりカレースパイスが効かせてある。

ほうばってみるとまず驚くのはパリッとしたパンの心地よい食感。そしてハンバーグの、鬼の、いや仏のような柔らかさ。ふわっとして肉汁があふれてくる。そしてウインナーのパリッと感とキャベツのジャキッと感。一口の中にすべてがあるような。たまらない旨さである。無心で一気食い!

――本当に美味しいです……。感動しました。

「ああそうですか。パンをパリッとさせるのがコツですよ。食べていくうちに柔らかくなるから、早めに食べる。パリッとするのが大事」

――また食べにきます!

「ありがとうございます。今、71歳。あと20年はがんばらんと(笑)」

ご主人がお元気なうちに絶対また食べに来ないとな、と思いつつ公園を歩いていると、偶然ご主人のお友達だという男性に出会った。

その方が言うには、ご主人はすごくアクティブで、釣りが趣味で船も持っていて、お店が休みになる雨の日でも、そんなにひどい雨じゃなければ釣りにでるらしい。さらに驚いたことには「グライダーもやっとったんよ! 阿蘇山のふもとでね。元気でしょう?」という。ご主人がグライダーで滑空している姿、ちょっと想像できないが、きっとまだまだ元気に美味しいハンバーガーを焼いてくれるはずだ!
71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーはマニアが全国3位に選んだ絶品だった

(スズキナオ)

店舗情報:
「今屋のハンバーガー」
住所: 福岡県福岡市中央区西公園13−13 西公園中央展望展望台広場
営業時間:10:00~夕方頃
定休日:雨天、荒天時