うまい棒のメーカー「やおきん」が自社工場を持たない理由

「駄菓子」と言われて、真っ先に思いつくのは何だろうか? 年代や地域によってもさまざまだと思うが、デジタルネイティブ世代や今の30〜40代にとって、駄菓子の代表格と言えばやはり「うまい棒」だろう。筆者も子供の頃、握りしめた10円玉をいったい何本のうまい棒に変えてしまったのかわからない。


近年では、2ちゃんねるやYouTubeなど、現在のネット文化の領域でもしばしばアイコンのように扱われるうまい棒。このように、うまい棒の認知度は世間的に高くても、その販売メーカーである「やおきん」について我々はよく知らないのではないか。筆者もその一人だった。早速、気になって調べてみたのだが……驚いた。

うまい棒のメーカー「やおきん」が自社工場を持たない理由

やおきんの公式サイト上には、360と把握しきれないないほどの駄菓子のラインアップが掲載されているのだ。日本中の駄菓子屋にある、すべての駄菓子がやおきん謹製なのではないか!? とすら思えるほどだ。
なんだか気になってしまったので、やおきんに取材を申し込んでみることに。営業企画部の田中さんが疑問に答えてくれた。

やおきんは工場を持たない「ファブレス企業」という側面を合わせ持つ会社だった!


うまい棒のメーカー「やおきん」が自社工場を持たない理由
やおきん八潮営業本部

――私は30代半ばなんですが、小さいころから慣れ親しんでいるうまい棒がコンビニで売っているのを見ると、今でも思わず購入しています。「やおきん」という会社名は昔からなんとなく知っていたのですが、公式サイトを見たときに「300を超える商品ラインナップがあったのか!」と、正直驚きまして。味やお菓子の種類の多さについて、なぜあのような展開の仕方をしているのでしょう?

「やおきんは現在ひとつの『メーカー』という立場ではあるのですが、自社の工場は持ってはいない、実は世の中でいうところのファブレス企業のような側面も持った会社です。さまざまな製造メーカーさんが扱う、ふがしやきなこ棒、にんじん、ミルクせんべいなど、いろいろな商品を取り扱っているのです」

――つまり、やおきんは代理店のような動き方で交渉や契約の部分を担当することで、駄菓子を長年作っているような中小さんの販路を担ってあげるのが、大きな役割ということですね。

「そうですね。
ただ、あくまでメーカーさんと商品があってのことですので、そこは逆に我々のほうがたくさんの品揃えを持たせて“いただいている”、という感じなんです。単純に『我々はファブレス企業です』と言い切れない部分はそこにあります。

スーパーマーケットの商談でいうと、1品1品『この新商品が出ました』と持っていくときもあったり、春夏、秋冬で棚ごとの選定会があったりします。

そういった際に、いろいろなメーカーさんの商品を『販売者やおきん』の商品としてもらうことで、我々は『販売の責任』というのも担っています」


商品のブランドを継承するために やおきんの担う役割とは


――やおきんは、クオリティ・コントロールを役割として担っている部分も大きいということですね?

「そうですね。我々のほうで『こういうかたちはどうですか?』など製造者さんに企画や要望をさせていただきながら、責任を持って販売させていただくという部分を含めて、『やおきん』という名前にさせていただいています。

あとは、品揃えと販売ということですね。
たとえば品揃えに関して、各店舗さんへ商品をお届けする際、いろいろな商品を『この商品はここの倉庫から届けて、あの商品はあそこの倉庫から届けて』というふうにするのは大変なので。やおきんの倉庫に一度全部取りまとめています」

――メーカーであり問屋であり、という感じですね。

「そうですね。また、駄菓子の味に関しても各メーカーとお話合いをさせていただいています。うまい棒でいうと、製造工場であるリスカさんはご自分のところで販売もするメーカーなのですが、我々やおきんと一緒になって『うまい棒』を立ち上げて、ブランド化しています。

今も味や新商品、キャラクター、グッズにしても一緒に企画を進めさせていただいており、商品のブランドを継承していくために、工場さんともいろいろ一緒になって協力しています」

――製造している中小の工場さんと密に連携して、一緒に商品を盛り上げていこうという熱意も感じますね。


「大手のようにCMを打って販売していくのも良いと思うのですが、我々はひとつの商品をできるだけ長く継続しながら販売していきたいと思っています。実際に20年30年、40年50年続いている商品もあって、“文化”と言ってしまうと少しおこがましいのですが、そういうものでありたいと思いますね」
うまい棒のメーカー「やおきん」が自社工場を持たない理由

次回は、やおきんの看板商品「うまい棒」や駄菓子が後世に受け継がれる背景について、より掘り下げていくことにする。
(五反田マモル)