明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』

開館70周年を迎えた明治記念館で、明治時代の宮中晩餐会にちなんだ『明治宮廷のダイニングホール~よみがえる近代の饗宴~』が開催中です。

当時の貴重な品々も多数展示され、壮麗で華やかな明治時代の宮廷外交の様子が垣間見られます。
さらに、明治天皇や伊藤博文公も食べたとされる料理も復刻され、実際に味わうことが可能だとか。実際に足を運んでみました。

明治宮廷の華麗なダイニングを再現


戦後、日本初の総合結婚式場として開館した明治記念館ですが、歴史を紐解くと明治14年(1881年)に赤坂仮皇居の御会食所として造られたのが始まりだそうです。明治22年に皇居内に宮殿が完成するまでの間、この建物で海外の賓客などをもてなす饗宴が行われていました。今回の特別企画は、そうした明治記念館のルーツに関係する催しになっています。

ちなみに記録に残る御会食所最初の晩餐会は、訪日した2人の英国王子アルバートとジョージを迎えて行われたもの。ジョージ王子は後の国王ジョージ5世で、現在のエリザベス女王のお祖父さんなのだそうです。

明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


展示コーナーでまず迎えてくれるのは明治時代の大礼服です。腰にサーベルを下げていますが、軍人ではなく文官の服とのこと。大臣などがこれを着て晩餐会に出席したのでしょう。

明治14年頃の東京の様子が分かる版画も展示されています。井上安治が描いたもので、中央には仮皇居が、周辺には品川やお茶の水といった場所の様子が描かれた版画もあります。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


目を引くのは手のひらに乗るくらいの小さな銀製の細工物。
ボンボニエールというものだそうです。もともとは金平糖などを入れる菓子器なのだそうですが、明治の中頃以降は皇族のお祝い事や晩餐会などの引き出物として配られるようになったとのこと。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


銀製でとても細かい細工がしてあり、パカッと開いてお菓子が出てくるものもあります。これを出席者の人数分作るのだから、職人の腕も大変なものですね。

ボンボニエールの形も、そのときのイベントがモチーフになっています。たとえば地球儀の形をしたものは、皇太子時代の昭和天皇が欧州歴訪から帰国した記念として配られたものだとか。

明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


それから、明治時代の宮中晩餐会のメニューカードも多数展示してあります。これは、ドラマにもなった「天皇の料理番」秋山徳蔵が研究のために収集したもの。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』
公益財団法人味の素食の文化センター所蔵


フランス料理の名前が漢字で書いてあるのでとても難解ですが、対訳も付いているので、料理名を当ててみるのも楽しいかもしれません。ちなみに、コンソメスープは「牛肉羹」と表記してあります。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』
公益財団法人味の素食の文化センター所蔵


当時の料理を再現したものもありました。明治20年にドイツ貴族フリードリッヒ・ヴィルヘルムを迎えての午餐のもので、明治天皇も食べたと考えられています。
料理のレシピは残っていないので、メニューカードから中身を推理し、明治記念館の青柳総料理長が再現。それをさらに食品サンプルとして写し取ったものだそうです。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


料理は肉料理3品、デザートも3品と重複が多く、量も盛りだくさんなのですが、当時は大皿から好きな料理を取り分けて食べていたのだろう、とのことでした。

明治天皇や伊藤博文公も食べたカレーを味わう


ラウンジ「金鶏の間」では期間中、「鴨肉のカレーライス」と「富士山アイス」のセットが食べられます。こちらのラウンジは、初代総理大臣・伊藤博文公を中心に明治憲法の草案審議が行われた場所だそうで、そう言われるとなんだか身が引き締まる気持ちになります。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


その伊藤博文公が明治天皇に招かれて一緒に食べたと言われるのが、この「鴨肉のカレーライス」。
明治17年のメニューカードから掘り起こしてきた料理だそうです。

カレーの中には固形の肉や野菜は見当たりません。きっとトロトロに溶けるまでじっくり煮込んだのでしょう。鴨のもも肉がわずかに溶け残っています。辛すぎることなく、後味でスパイスが香る欧風カレーです。

鴨肉は分厚く切ったものが五枚。
脂身が少なく引き締まった肉で、カレーによく合います。きっと脂身が多くて柔らかい肉よりも、かたく締まった肉を柔らかく料理して食べる方が上品なんだろうなあ、と思いながら、美味しくいただきました。
明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』


富士山アイスは、現在でも宮中晩餐会で振る舞われる定番メニューなのだそうです。本物は大きな富士山を取り分けて食べるらしいですが、こちらは小さな一人前の富士山です。

抹茶とバニラの富士山に、湖を模した5種類のデコレーションソースが付いています。雲の形の細工も手が込んでいます。アイスは密に詰まっていて、口の中に入れるととろけて甘さが広がります。

特別企画の展示は11月9日まで。会期中は、チャリティー・リサイタルやパネル・トークなどのイベントも行われます。この機会に、古き良き時代の宮中晩餐会の雰囲気に浸ってみるのはいかがでしょう。
(山根大地/イベニア)

明治天皇も食べた(?)カレーも再現『明治宮廷のダイニングホール』

『明治宮廷のダイニングホール~よみがえる近代の饗宴~』
■会期 : 2017年7月26日(水)~11月9日(木) / 不定休
■開館時間 : 平日10:00~19:00、土日祝日09:00~19:00
■会場 : 明治記念館 館内特設コーナー
■入場 : 無料
■主催 : 明治記念館
■協力 : 公益財団法人味の素食の文化センター
■URL : http://www.meijikinenkan.gr.jp/