「お盆後の海はクラゲが出る」は本当か
きれいな海で楽しみたくても、クラゲでチクチクされっぱなしじゃ、なかなか楽しめませんよね。
毎年、お盆過ぎのこの時期になると、ハッと気づくことがある。
「まだ海、行ってないじゃん!!」
やはり一度ぐらいは海に行かないと夏が終わらない気がするのだが、ぼやぼやしてるうちに、いつもお盆明け。
クラゲが出る時期だ。

昔から、「海に行くなら、クラゲが出るお盆前」とよく言われたものだが、そもそもそれは本当なのか。何を根拠に言われているのか。

サンシャイン国際水族館に聞いてみると、展示課・大塚さんがこんな回答をくれた。
「『お盆の後の海にはクラゲが出る』というのは、アンドンクラゲをさしていることが多いようです。特に西日本では、お盆以降に多くの海水浴場がこのクラゲの多数出現により、閉鎖されるそうですよ」

アンドンクラゲは、強い毒をもっており、西日本では「電気クラゲ」とか「イラ」などと呼ばれているものだとか。
本当にお盆後の海に、クラゲ、出るんですね……。
「ただし、アンドンクラゲは6月下旬くらいから、イソギンチャクのような状態の『ポリプ』から遊離して、9月までの3カ月で最大サイズまで成長するといわれています。つまり、お盆前にも成長しきっていない小さなアンドンクラゲは存在してるんですよ」
お盆後に「突然、発生」ではないわけだ。

ちなみに、クラゲが海に増える理由は、「漁獲によって魚類が減る→餌となるプランクトンが多くなる→プランクトンを食べるクラゲが繁殖→増えたクラゲが魚類の浮遊卵や稚魚を食べる→ますますクラゲが増えて魚類が減る」という悪循環にあるという。
その他に、「港や護岸などコンクリートで建造物が海中に増えると、クラゲのポリプが定着する基盤が多くなり、クラゲが増える」「河川に流す下水など、栄養豊富な物質が海に過剰に流されると、プランクトンが増えてクラゲが増殖する」とも言われているらしい。

ところで、一般には「お盆明け」といわれているが、温暖化などの影響で、発生する時期は早まったりしてないの?
「アンドンクラゲがポリプから遊離するのは、大潮の前後に集中するといわれていますので、水温にも関連があると思います。
つまり、温暖化によって、発生する時期が早く、おまけに長期間に及ぶ可能性は十分にありますよ」
とのこと。
ってことは、お盆前でも結局アウトなのか……? 海水浴を楽しむ期間、クラゲの問題は避けて通れないということか。

ちなみに、アンドンクラゲが出現するのは、「黒潮などの暖流の影響域に一致する」そうで、日本では沖縄県から北海道南部まで。ただし、発生する(ポリプから遊離する)のは、西日本が北限といわれているとか。
「つまり、西日本以北は、海流にのって現れることになりますので、出現する時期が北に行くほど遅くなります」

「クラゲがお盆後の海に出る」は、実体験に基づいた言い伝えではあるが、実際は地域によって多少異なり、さらに環境の変化によっても変わってきているようだ。
(田幸和歌子)