「もしも~し……??」→アンテナを伸ばしながら移動……。

携帯電話でありがちなこんな光景、そういえば見なくなりました。

なぜって、ご存じのとおり、携帯からアンテナの姿がなくなったから。

思えば、昔から音が聞き取りづらいとき、アンテナを伸ばしてはみたものの、それによって受信状況が改善されたという記憶は、ほとんどない。
にもかかわらず、一生懸命伸ばしてみてたけど……。今さらながら、ちょっと疑問。そもそもあの「アンテナ」って意味があったんでしょうか。
情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)に聞いた。


「携帯電話のアンテナはなくなったように見えますが、『内蔵アンテナ』になっただけで、今も中にほぼ100%ありますよ。地デジ対応テレビの場合、アンテナの内蔵化の難度が高く、まだ外に出ていますが、携帯電話の内蔵アンテナは7~8年前に出始めて、ここ3年ぐらいで一気に『内蔵』が当たり前になりました」

理由として挙げられたのは、以下の点である。
「以前は外に出ているほうが電波をキャッチしやすかったんですが、アンテナメーカーの工夫により、アンテナそのものの感度が良くなったことがまず一つ。でも、今は地下街などでも対応できるよう、基地局数が増え、受信できる範囲が広まったことがいちばん大きいと思います」

かつては「ビルの高いところで圏外となった」ということも多かったが、
「ビルの屋上や山の上から今は電波がきていますからね」

つまり、様々な状況が変わり、アンテナの機能そのものも以前より良くなっているわけで、結局、かつての「アンテナを伸ばす」こと自体にはそれほど意味がなかった……なんてことはない?
失礼ながら、あるアンテナメーカー関係者に聞いてみると……。
「アンテナが内蔵になったのは、技術的な工夫による進歩ももちろん大きいですが、もう1つ、携帯電話のデザイン上の問題もあります。アンテナが外に出ていると、どうしてもデザイン的に制約を受けてしまいますから。
機能だけを考えるのであれば、やはりアンテナは伸ばしたほうが感度は良いんですよ。ただし、基地局が増えたことで、アンテナを外に伸ばさなくてもキャッチできるように、カバーされるようになったことが大きいです」

当然、メーカー側の努力は大きい。素人にはわからない、実はすごい進歩があるのだろうとも思う。
だが、一般レベルではやはり私と同様に、「携帯のアンテナ伸ばしてもあんまり変わらなかった」という声はけっこうあるようで……。

1990年初頭ぐらいのトレンディドラマの再放送など見ると、登場人物の使っている携帯電話の大きさに「家電かよ!」「トランシーバーかっ!」とツッコみたくなることがよくあるが、同じように「アンテナを伸ばしながら」とか「受信状況の良い場所を探しながら」みたいな携帯電話の使用の描写も、すでにちょっぴり懐かしい光景になっています。
(田幸和歌子)