たまに聞くのだが、“標準語”という言葉に憤りを覚える地方出身者がいるみたいなのだ。
「どこの基準で、東京が“標準”やねん。
俺の標準は大阪や!」と誰かが言っていたが、それも納得できる。自分が今そこにいる、踏みしめているその場所が、当人にとっての“世界の中心”なのだから。

そんな思いを形にしたような、見慣れない日本地図が発売された。北海道の出版社「札幌グラフコミュニケーションズ」が、北海道を中心とした『日本全図』を製作した。

画像を見ておわかりになるだろうか? 札幌が真ん中になってる。
特徴は、“札幌を中心に、日本のすべての範囲を図示”、“北海道を図のほぼ中心に置き、方位を約100度回転”、“オホーツク海、千島、サハリン(樺太)の主要地名を記載”などなど。


それにしても、どうしてこんな物を? 「北海道を中心とした日本全図」制作委員会の荒井さんに話を伺った。
「日本地図では、北海道は通常北東端で、どうしても東京・大阪に目がいってしまいますよね。“これは、可能性を十分に生かしていない!”と、真ん中に北海道を持ってきました」

この地図を思いつき、編み出したのは、立命館慶祥中学高等学校の加藤敦史先生。Googleマップをグルグル回しているうちに考案したという。それを見た荒井さんが「これを大っきくして、商品化しましょう!」と、2人のみの制作委員会を結成。めでたく、7月2日の発売に辿り着いた。


ちなみに、どういう人が買っていくのか。やはりと言うか、“地図好き”が多い年輩の方の購入が多いという。
中でも、特に函館在住の人。
「函館は、“日本の魅力的な街ランキング”で、札幌を抜いて1位に輝いたばかりなんですね。今、ちょうど自分たちの街に誇りに思っているんです」(荒井さん)
自分の街への愛情が高まった今だからこそ、北海道中心の地図がウケた。

また、旅行会社からの注文も相次ぐ。

「通常の日本地図では、北海道と中国の関係がわかりませんよね。中国では、北海道の阿寒でロケが行われたドラマが『タイタニック』以上のヒットを記録し、北海道にお越しになる方が多いんです」(荒井さん)
そこで、北海道と中国、ロシアの位置関係が一目瞭然な、この地図の需要が高まっているのだ。

そんな北海道内外からの人気は、数字にも表れている。
「元々、1000部限定の販売だったんですが、10日で800部の注文が寄せられました」(荒井さん)
当然、追加生産が検討されている人気ぶり。

注文は札幌グラフコミュニケーションズのウェブサイトか、紀伊国屋書店の札幌本店で受け付けている。価格は1,000円(税込み)。


「北海道は今、経済的に元気がない状態なので、元気になってほしいと考えています」(荒井さん)
なるほど、パワーに溢れた地図である。
(寺西ジャジューカ)