筆者調べによりますと、ウルトラCの“C”とは、体操競技における難易度を表すA~Cのうち、最も難しい“C難度”の“C”のようです。そこから、ウルトラCとは、「大逆転を狙うべく繰り出す、最高難度のとんでもない大ワザ」という意味で使われているらしいですよ。


このように、冒頭で答を出してしまうと、以降の文章を読者の皆様に読んでいただけない可能性が高まりますよね。書き手としては、構成大失敗かもしれません。でもですね、読者の皆様。貴重なお時間を頂戴して読んでいただくわけですから、なるべくスピーディーに、記事中で言いたいことをお伝えした方が良いかと思ったのです。冒頭をお読みいただくだけでも内容をご理解いただける、今回のコネタ。お急ぎの方は、ここでの読了も可能となります。


では、(構成に失敗した)筆者が、なぜ「ウルトラCの“C”とはいったい何?」と思いましたかというと……。

筆者は仕事柄、言葉に対して普段から敏感な方だと自覚している。現在30代の筆者が、若い人たちが使うような言葉を会話に用いることはないものの、いま、若い人たちがどんな言葉を使っているかに関しては、日頃から気にしているつもりだ。同じように、少し前までは一般的に使われていたのに、いつの間にか消えていった「死語」に関しても注意を払うようにしている。

そんな死語をやたらと使う、“死語使い”が筆者の知人にいる。あえて死語を使っているのか、それとも無意識に使っているのかはわからないが、その知人と話していると必ず2~3回は死語が出てくるのだ。


「カップル」を「アベック」と呼ぶのは、まあ、まだかわいい類の死語かもしれない。東京出身の男の子のことを「シティボーイ」と呼んだかと思えば、「冗談はよしこさん」などと、耳を疑うような死語を口にしたり。JR線を「E電(イーでん)」と呼んだかと思えば、筆者のことを「●●(←筆者の苗字)選手」と呼んでみたり。「待って」を「タンマ」、「退散する」を「ドロンする」、「快晴」を「ピーカン」……。

そして、この友人が最近頻繁に使っていたのが「ウルトラC」だったのである。しばらくは、何気なく聞き流していたものの。
あまりに多用しやがるので、「一体なんなんだよ! ウルトラCって!」とイラ立ちまぎれに迫ると、「……ウルトラマンの兄弟?」と知人。ああ、なるほど。ウルトラマン系列の誰かを指す言葉だったのか。“Cマン”とか呼ぶウルトラマンがいるのかな。うん、なるほどなるほど。と、妙に納得した筆者だった。
が、なんだか無性に気になってしまい、調べてみると……。

冒頭のとおり、全然違いました。ウルトラCは、ウルトラマンの兄弟ではありませんでした。そんなウルトラマン、いませんでした。

現在の体操競技の難易度は、A~FもしくはGまでの、6~7段階に分類されているという。A~Cまでの3段階に分けられ、最高難度がCだったのは1985年以前のことである。
そして、「ウルトラC」という言葉が生まれたのは、1964年の東京オリンピックでのことだったらしい。

「デイリースポーツ三十年史」によると、東京オリンピックの体操競技で強化委員を務めた上迫忠夫が、オリンピック前年に開催されたプレ・オリンピックの強化合宿中、取材に答える形で「ウルトラC」という言葉を発した。これがデイリースポーツ紙に掲載されたのが、「ウルトラC」が世に出た初めてのことだったという。

大逆転とは、奇跡のことである。奇跡を起こすには、失敗のリスクが伴う「ウルトラC」が必要不可欠なのだろう。死語になった「ウルトラC」ではあるものの、生きていく上で大切な意味を持つ言葉といえるかもしれない。

(木村吉貴/studio woofoo)