午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

関東屈指の呑み屋街のひとつである横浜・野毛に、阿武茶゛(あぶぢゃ)という名の訪れるのに「ハードルの高い」食堂がある。ハードルが高いといっても、超高額だったり、怖い人がいたりするわけではない。
開店時間が午前3時~午前8時までの「リアル深夜食堂」だからだ。

日中仕事の人間が行くには、夜中飲み明かしてから向かうか、アーリーバードしか訪れることができない。野毛の夜を支える飲食店で働く人が中心に集まるお店であり、いつも盛況だ。

「リアル深夜食堂」に入る


夜はがやがやしている野毛エリアだが、早朝5時を回った頃には、スナックも飲食店もシャッターが閉まっていて大変静かだ。聞こえる音は、カラスの鳴き声と酔いどれの叫び声のみ。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

ここが野毛の中心にある「阿武茶゛(あぶぢゃ)」。
1979年創業と歴史も長いが、当時から午前3時開店である。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

暖簾をくぐってみると、温かなまなざしのご主人とお母さん。
お母さんは87歳で、いまも現役でバリバリ働いている。お客さんも和気あいあいと食事を取っている。
飲食店の店長とお客さんらしき人など、野毛界隈の人が集まっているようだ。

カウンター10席ほどとテーブルが1卓のみ。
午前5時にも関わらずほぼ満席で、何とかカウンター席に座らせてもらえた。

メニューは壁に張っているもの以外は、目の前の魚から煮魚・刺身を選び、1品か盛り合わせを選択できる。全てがオススメのようで、みながばらばらのものを頼んでいるが、煮魚か刺身はマストのようだ。
注文の仕方も慣れていないと戸惑う。値段がないのでやや不安はあったが、その他おにぎりや目玉焼き、焼きナスをセレクト。

飲物は、サービスのお茶かビール・日本酒のお酒類のみ。
間違っても、オレンジジュースやカシスミルクなんぞは頼んではならない。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

混みあっていたこともあるが、十分ほど待つことに。早速、お刺身盛り合わせからいただくことに。ずいぶん贅沢な盛り合わせが登場した。一口食べると、口の中でふんわりとろけていくマグロにまず驚く。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

プリッとひきしまったエビもウマい。
ハードルが高いという点をクリアしてでも、一生に一度は食べておきたいほどのお刺身だ。目玉焼きはとろりと半熟。醤油をたらりとかけていただく。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

おススメは、目玉焼きの熱と油でしなっとなったキャベツを一緒に口にほうばること。思わず「ウマイ!」と叫びたくなる。

ちょうどいい焼き加減のナスは食べ応え抜群だ。

午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

おにぎりの種は、明太子・タラコ・筋子・梅から選べる。
ただし、ここは深夜食堂。日の仕入れによって、具材は変わるかもしれない。
午前3時に開店する「リアル深夜食堂」に行く

「いくらになるかな?」と算盤で計算するご主人の後姿を少々不安を感じつつ見ていた。
値段はメニューにも書いていないが、心配することはない。これだけ食べて、1800円ジャストだった。

結局、何がいくらだったかはわからないが、これだけ自由に注文したにも関わらずなのでかなりお手ごろである。
(松岡佑季)