ドイツの経済誌『Manager Magazine』は、中国政府が国内の不動産市場引き締め政策を実施しているため、中国人資産家が香港、バンクーバー、ロンドンなど海外の不動産を買いあさっており、不動産価格の高騰が地元住民の不満を引き起こしていると報じた。

 同誌(6月7日)は、「香港が14年前に中国に返還されて以来、このかつての植民地は、民主化運動の飛び地となった。
しかし、今年の春以降、香港の民衆が叫ぶスローガンは、“自由”から“公正な不動産価格”に変わった。人々は不動産価格の高騰に不満を抱いている」と紹介した。

 香港政府は不動産価格の抑制措置をとっているものの、中国資本が波のように押し寄せるため、何の役にも立たないという。中国政府が国内の不動産市場引き締め政策をとって以来、この流れは加速しており、現在中国資本は主に香港、カナダのバンクーバー、ロンドンに流れ込んでいる。

 同誌によると、バンクーバーに物件の買い付けに来る中国人について、「不動産を漁る中国人投資家は、いつも集団をつくってやってくる。現金がぎっしりつまったスーツケースを持って、上海、北京、香港、広州から飛んでくる」としている。
買い手同士の競争も激しく、あっという間に成約してしまう。2月の旧正月期間中には、不動産売買金額が前の月より7割増加したという。

 また、こうした現象を引き起こしている原因として、中国が最近、外国旅行を緩和したことや、昨年10月以来、不動産投機を抑制するため4度利上げしていることを指摘している。

 バンクーバーが中国人に人気な理由としては、良好な教育制度、温暖な気候、自由な移民政策、安定した政治環境、アジア系移民が多いことが挙げられる。

 記事は、「バンクーバーの不動産価格が急騰して、地元の不動産業者、オーナー、地方財政税務局は喜んでいるが、市民の間では反感が高まっている」としている。

 また、ロンドン及び周辺エリアでも、新築のアパートやビルの60%がアジア人によって買われており、その大部分が中国人だという。
(編集担当:中岡秀雄)

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