日本語が大好きな私が、日本語を「捨てた」理由―中国人学生

2017年8月20日 13時10分 (2017年8月23日 00時00分 更新)

中国は大変な競争社会で、大学進学率の上昇とともに学生たちは就職難にも見舞われている。そんな中で、山西大学の王亜楠さんは自身の好きな日本語と就職率の間で葛藤した時のことを作文につづっている。資料写真。(Record China)

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中国は大変な競争社会で、大学進学率の上昇とともに学生たちは就職難にも見舞われている。そんな中で、山西大学の王亜楠さんは自身の好きな日本語と就職率の間で葛藤した時のことを作文に次のようにつづっている。

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私はかつて日本語を捨てました。高校時代から日本のアニメが好きで、日本文化についてもずっと興味を持っていました。だから、大学では自然と日本語学科を希望しましたが、家族は驚きました。母はすぐに反対し、「日本語学科を卒業して、どのような仕事をするつもりなの?」と言いました。友達も「なぜそんな就職が難しい学科を選んだの?」と聞きました。昨今、中国では普遍的に「就職しやすい専攻がいい専攻」という価値観が存在しています。日本語はもちろんその枠には入っていません。

日本語が好きだったので、はじめは周りの言論を気にせずに、初志貫徹、日本語学科に入学しました。しかし徐々に周囲の声、つまり就職のことが気にかかってきました。入学間もないある日の学級会で、生活指導員の先生から聞いた話の中に「日本語科の就職率が低い」という言葉があり、気が滅入ってしまいました。それからは、いつも当時の選択が正しかったのかどうかを疑って、大変困惑しました。就職のことを考えると、日本語のテキストなんか見たくないと感じ、日本語から離れていきました。

そして母親と相談し、就職しやすいといわれる経済を学ぶことを決め、日本語学科に在籍しながら経済を独学で勉強し始めました。しかし、状況はかえって悪化していきました。なぜなら経済に対しては元から情熱もなく、独学はとても辛く、その上日本語を勉強する時間が少なくなり、成績がどんどん下がっていったからです。そこで、私は一体どうすればいいのかと焦り悩みました。

ある日、日本語科の堀川先生と話をしている時、耐えられなくなって自分の悩みを打ち明けました。すると先生は優しく聞きながら、「落ち着いて自分の心の声を聞いて。あなたが心から楽しいと思うものは、何ですか」と私に質問しました。そして私の回答を待たずに、先生は自らの体験を話し始めました。

先生は大学時代から中国語を勉強していました。そして中国語や中国文化に興味を持っていて、中国へ行こうと学生時代から考えていました。中国語は日本でも仕事を探しやすい専攻ではなく、周囲の人は反対していたそうです。でも先生は心から中国語が好きで、他人の意見は聞かずにこの道を選び、中国に来て自分の好きな仕事をしています。その中にはいろいろな困難もありましたが、この道に対する情熱を頼りに、困難に打ち勝つことができたということでした。

そして最後に先生は「就職はもちろん重要なことです。それは大部分の人が選ぶ道です。しかし、道はそれだけではありません。他人の意見に惑わされないで、まずは自分の心の声に耳を澄ませて、本当に歩みたい道を選んだほうがいいと思います」と言いました。先生の話を聞いてから、目の前の暗雲が払われて燦々(さんさん)と輝く太陽が見えたかのようにハッとしました。

日本語が好きな私が、なぜ日本語を捨てて、経済を勉強したのでしょうか。就職は重要です。しかし、自分が嫌いな仕事をしても、本当に心からの幸せを感じることができるのでしょうか。すぐに日本語に対する情熱が燃え盛る松明(たいまつ)の炎のように勢いよく再燃し始めました。それからは、日本語を勉強すればするだけ好きになり、毎日楽しく過ごせています。もちろん成績もどんどんよくなりました。

後日、先生の言葉と自身の心境の変化を家族に話すと、家族は二度と就職についてあれこれ言うこともなくなりました。先生は自身の経験を語ることで、私が日本語への情熱を取り戻すきっかけをくれました。(編集/北田)

※本文は、第十二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「訪日中国人『爆買い』以外にできること」(段躍中編、日本僑報社、2016年)より、王亜楠さん(山西大学)の作品「落ち着いて、心の声に聞き従う」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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