東野圭吾の作品の中でも特に実写化が難しいと言われてきた感動作を廣木隆一監督が映画化した『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。手紙を媒介とし、時を超えて人の思いが繋がる不思議な物語が綴られる本作で、養護施設で育った主人公の敦也に扮した山田涼介(Hey! Say! JUMP)と、敦也と行動を共にする翔太役の村上虹郎、幸平役の寛 一 郎の3人が、撮影を振り返った。


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 「人生は一期一会だなと改めて感じられる映画。人と人との繋がりとか、人の温かさとか、そういうものを素直に感じられると思います」と落ち着いた様子で語る山田。施設で共に育った3人組を演じた彼らは、それぞれが初共演であり、互いの印象を次のように話す。

 「虹郎はすごく堂々としてましたね。撮影当時19歳だったんだけど、19歳とは思えない佇まいの人だなという印象でした。寛ちゃんは見た目とは裏腹に、すごく人見知りの、可愛い弟みたいなタイプでした(山田)」。


 「山田くんに対しては、まず『山田涼介がいる!』と思いました(笑)。最初は挨拶しただけで、現場に入ってからよく話すようになりました。寛 一 郎とは共通の知り合いが多くて、会ったことはなかったのですが、仲間意識みたいなものはあった。無口だと聞いていたのですが、寛 一 郎から来てくれて。お、意外だ、と(笑)(村上)」。

 「山田くんはいい意味でちゃんと壁のある人で、ホッとしました。
僕はわ~っと喋られると、どうしようとなってしまうので。徐々に話していく感じでよかったです。虹郎は同じ歳だし、共通の知り合いもいたし、僕も仲間意識があったので、頑張ろうと、自分から話しかけました(寛 一 郎)」。 そしてクランクイン前に3日に渡って行われたリハーサルが、3人組の空気感を作り上げたと口を揃えた。本編は東京と大分で撮影。「大分には走りに行ったようなものでした。
ひたすら街を走ってました」と寛 一 郎が明かすと、山田が大分で収められた印象的なシーンを挙げた。「夜、僕らが商店街を走っていくシーンで、通り過ぎていった端から順に店に明かりが付いていくところがあるんです。CGじゃなく、商店街のみなさんに協力していただいて撮影しました」。すると村上も「ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』みたいだった」と幻想的なシーンを思い返し、寛 一 郎も頷いていた。

 また、その演出に多くの俳優たちが影響を受けたと語る廣木監督について、村上が「山田くんの泣きのシーンで、長いシーンのテイクを何度も重ねていました。」と回想。俳優として新たな感覚を得たシーンを山田が述懐した。


 「1回で泣けなかったのは初めてでした。気持ちが繋がっている前のカットから撮影にスパンがあったんです。監督からは『大事なシーンだから』とずっと言われていて(苦笑)。プレッシャーにやられたというか。廣木監督ってモニターを見ずにカメラの横に立つんですけど、その時も僕の目の前にいて、最初は監督の姿が目に入ってたんです。それが休憩をはさんでやった最後は、監督が目に入らなかった。
こういうのを、演技を超えた演技というのかな、監督が待っていたのってこれなんだなと。クランクアップの日でしたが、そこで知ることができて、監督とやれてよかったと感じました」。

 そして観客にメッセージを送った。「奇蹟を信じるとか言ったりするけど、奇蹟っていうのは、自分で手繰り寄せるものだと思うんです。それを、この映画で感じてもらって、自分を見つめ直す時間を作ってもらえたらなと思います」。(取材・文・写真:望月ふみ)

 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は9月23日より全国公開。