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2009年10月7日 10時53分

ラブプラスが彼女を怒らせる構造

彼女や奥さんがいる人がラブプラスを遊ぶなら、DSを破壊されないよう注意が必要かもしれません
■新作ギャルゲーが売り切れ続出

 最近、インターネット上でラブプラスというニンテンドーDS(以下DS)の恋愛シミュレーションが話題を集めています。コナミデジタルエンタテインメントから発売されたこのゲーム、新規タイトルでありながら2009年9月3日の発売日を迎えるやいなや、完売するお店が続出したのです。

 初週の売上げは約5万本。たった5万本? と思われるかもしれませんが、そもそも恋愛シミュレーションというジャンルは固定ファンがいて一定の売上げは見込めるものの、新規顧客の獲得が難しく爆発はなかなかしにくい、というのがマーケットの特徴です。初回出荷分をほぼ売り切っての5万本、出荷が多ければさらに売上げを伸ばしていたであろうことを考えると、これは大健闘と言ってよいでしょう。それがブランドの無い全くの新規タイトル、昨今の恋愛シミュレーションに限ればちょっとした事件ですらあります。

 ラブプラスにはまったがために、彼女や、奥さんを怒らせてしまったなんて話もユーザーから飛び出しているんですが、これは面白そうだ、ということでガイドも早速買ってプレイしてみました。なるほど、確かにこれは怒らせそうです。そして怒らせそうな部分こそ、ラブプラスのもつ新しさのようでもあります。ラブプラスがどういうゲームなのか、何がそんなにすごいのか、そしてどうして怒らせるのか、お話してみたいと思います。

■女の子を攻略するゲームではない?

 ラブプラスに登場する女の子は3人。まずはこの3人の中から1人と恋人になることを目指してゲームはスタートします。主人公と女の子達は高校生で、毎日学校に行きながら、勉強をしたり、部活や委員会、バイトなどをして1日を過ごします。

 毎日の過ごし方によって彼氏力と呼ばれるパラメーターが上下し、体力や知識、感性などを磨いくことで女の子からの好意が集まります。ここら辺は、非常にオーソドックスな恋愛シミュレーションです。

 彼氏力を上げつつ、ことあるごとに女の子達との会話を楽しみ、一緒に帰ったり、デートをしたり、悩みを打ち明けられたりしながら、親密度を高めていくと、ある日告白されます。告白されるとスタッフロールが流れてエンディング、というわけでめでたしめでたし・・・と終わらないのがラブプラス。実はここからが本番なんです。

 女の子と恋人になるまでは、いわばチュートリアルのようなもので、この先がラブプラスの本領発揮、いよいよお楽しみというわけです。

■女の子と毎日イチャイチャするゲーム

 女の子を攻略するまでは、本番じゃないとお話しましたが、じゃあ恋人になってしまったらその後はどうするのか。実際に現実世界で女の子と恋人になってしまったことがある方ならご存知だと思いますが、イチャイチャします。メールでイチャイチャ、電話でイチャイチャ、会ってイチャイチャ。そう、ラブプラスはここから先、女の子とイチャイチャするゲームになるのです。

 恋人になると、ゲームの進め方がガラッと変わります。実時間、リアルタイムで進行することになるのです。だから、1日の予定を決めたら、1日の時間に沿ってゲームが進みます。もちろんユーザーのプレイスタイルもガラッと変わります。いつもDSを持ち歩いて、暇を見つけては起動し、自分の予定の消化具合を確認します。女の子と連絡が取りたければ、その都度、メールをしたり、電話で呼び出すこともできます。

 恋人になる前と同じように、予定を消化していくことで彼氏力がたまり、今度はこれをデートをするために消費します。平日はマジメに予定をこなしながら、ちょっとした時間に女の子と会って、会話したり、手を繋いだり、人目を気にしながらキスしたりなんてしてイチャイチャ。そして彼氏力がたまったら、休日にデートの約束をします。デートの日は、約束の時間通りにきちんとDSを立ち上げて、彼女と待ち合わせをするわけです。

 1日24時間、1年365日、朝ならおはよう、夜ならおやすみ、季節も移ろえば記念日だって訪れます。長い時間お付き合いをすれば、相手はプレイヤーの好みにあわせて、服装や髪型、性格にも変化が。呼び名だって、仲良くなれば最初とは違ってきたりしますよね。そういう女の子との楽しい生活を日々送ることのできるゲーム、これがラブプラスなんです。

■nintendogsとラブプラス

 ラブプラスは、驚くほど、DSの機能を活用しきっています。タッチペンで女の子にタッチして、手を繋いだり、頭をなでたり、キスをすることができます。さらに、マイクを使って会話したり、ワイヤレス通信機能を使って自分の彼女と他のユーザーの彼女同士をおしゃべりさせることもできます。そして、リアルタイムにゲームが進行していくことも、DSの携帯性があってこそのシステムかもしれません。

 DSというハードの特徴をこれほど見事に生かしたゲームは、それほどたくさんは無いかもしれません。しかし、非常にラブプラスに近いゲームがあります。それは、任天堂が2005年4月21日に発売した nintendogsというゲームです。タッチペンで犬をタッチして、お手をしたり頭をなでたり。マイクを使って呼びかけて、すれ違い通信で他のユーザーの飼い犬が遊びにきます。そして、リアルタイムにゲームが進行して、時間が経てば犬はお腹がすいたり、散歩にいきたがったりしますね。

 nintendogsというゲームも、1日中ゲームをして攻略してクリアするようなものではなく、毎日犬と触れ合う、コミュニケーションを重視したゲームで、DSの機能は犬との触れあいのためにフル活用されています。だからこそ、触れたくなる、遊びたくなるように、犬が可愛いというところこそが重要なポイントです。実はその点についてもラブプラスは非常に似ています。

 nintendogsの最大の魅力が犬が可愛いことであるように、ラブプラスが好きな人にとって、最大の魅力は女の子が可愛い、ということでしょう。表情が可愛い、仕草が可愛い、会話の端々のちょっとした言い回しが可愛い。可愛いから、毎日一緒にいるだけで幸せなコミュニケーションを重視した恋愛シミュレーションなのです。

 そしてこの幸せというのが、彼女や奥さんを怒らせる最大のポイントになります。

■面白いゲームじゃなくて、幸せなゲーム

 ラブプラスは登場する3人の女の子のうちの誰かを好きにならなければ、価値の無いゲームかもしれません。多くの恋愛シミュレーションが多かれ少なかれそういうものであるかもしれませんが、ラブプラスは特に顕著です。

 犬の可愛さに興味の無い人がnintendogsをやって楽しいかを想像していただければ、分かりやすいかもしれません。特に、恋人になってしまった後は、目標を失い、いっそう退屈になるでしょう。ラブプラスは攻略するゲームとしてはそれほど面白いものではないんです。逆に、女の子に入れ込めば、恋人になった後こそ、とても幸せなゲームです。毎日毎日、彼女と一緒にすごして、触れ合い、少しずつの変化を楽しむことができるのですから。この、面白いゲームではないけど、幸せなゲームであるというところがポイントです。

 さて、もうお気づきだと思いますが、このゲームは構造的にプレイヤーの彼女や奥さんを怒らせます。登場する女の子を好きになって、一緒すごして、幸せになるゲームですから。これが犬なら一緒に可愛がっても貰えるでしょうが、女の子となれば話は別です。ことあるごとにDSを起動して、メールをして、電話をして、タッチペンで触れあい、マイクで声をかけ、あまつさえその顔がにやけでもしていたら、逆鱗に触れてもおかしくはありません。ゲームを攻略しているのならまだ許せても、他の女の子と幸せになっちゃってるんですから、これは怒ります。

 かくして、そういう微細な感情の違いを理屈抜きで捉えてピンとくる、勘の鋭い女性を怒らせるケースがいくつか発生しているのではないかと思います。しかし、そんなゲームだからこそ売れるんですね。男性ゲーマー陣の嗅覚も凄まじいものです。みんな幸せになりたいんです。

 ちなみに、ガイドがプレイしている間も、ガイドの奥さんが異形の相でこちらを睨む、というようなことが度々ありました。しかし、なんとか喧嘩には至りませんでした。ガイドはラブプラスをプレイしつつも、夫婦喧嘩を回避するためにいくつかの策を講じましたが、1番効いたのは奥さんにもプレイしてもらう、だったような気がします。奥さんはおとなしくてお嬢様の高嶺 愛花さんと恋人になった模様です。なんだかワケが分からないけど女の子とイチャイチャしているよりは、どういうものか分かった方が安心するのかも、しれませんね。

【ゲーム業界ニュースガイド:田下広夢】
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