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2009年11月25日 18時29分

人類進化の行方:4つの可能性を提示

 進化論を広めたチャールズ・ダーウィンの著書『種の起源』は1859年に出版された。以来、人類のルーツをたどる研究が進められており、150年が経過した現在は化石化した太古の類人猿にまで到達している。

 一方、科学者たちはいま未来の進化にも目を向けている。われわれの子孫は、いかついサイボーグになっているのかもしれない。コンピューターに精神を転送し、電子的な不老不死を手にしている可能性もある。逆に、人類の進化は既に終わっていると考える科学者もいる。

Photograph by Rebecca Hale, NGS [ 写真拡大 ]
 チャールズ・ダーウィンの著書『種の起源』が出版されてから、2009年11月24日で150周年を迎えた。同書をきっかけに人類のルーツをたどる研究が開始され、現在は化石の類人猿にまで到達するまでになった。

 しかし過去も重要だが、人類の行く末も気に掛かるところだ。未来の我々はどのような姿をしているのだろう。“スタートレック”の登場人物のように、現在とほぼ変わらない姿で宇宙を高速移動しているのだろうか。いかついサイボーグになっているかもしれない。あるいは意識をデジタル化し、電子的な不老不死を手にしている可能性もある。

 このような仮説は奇異に感じるかもしれない。しかし、『種の起源』の刊行当初、そこに説かれた類人猿からヒトへの進化は、大多数には受け入れがたい話だったことを踏まえて、人類がたどりそうな4つのシナリオを以下に提示してみよう。

◆予測1: 進化は終わった

「人類はこれまでと同様、今後も進化を続けると考えるのが自然ではあるが、実際にはそうはならない」と、ニューヨーク州にあるアメリカ自然史博物館の人類学者イアン・タッターソル氏は言う。

「進化的変化の研究から、遺伝的革新は小規模の隔絶した個体群でなければ定着しにくいことがわかっている」と同氏は説明する。例えばダーウィンの進化論に着想を与えたガラパゴス諸島の小鳥“フィンチ”はもともと大陸に生息していたが、一部が太平洋の離島で隔絶して生息するようになり、その特殊な環境に合わせて進化したのである。

『種の起源』は自然淘汰のプロセスを次のように概説している。まず、ある個体で遺伝子変異(脊椎が直立歩行向けに変化するなど)が起こり、それに何らかのメリットがあれば何世代も受け継がれ、ついには変異ではなく標準となる。

「しかし個体群が隔絶していない場合は異種交配が妨げとなり、たとえ有意義な変異でも遺伝子プールに定着する可能性はかなり低くなる。人類はいままさに、そのような状況に置かれている」とタッターソル氏は解説する。

「生活が安定したことで人口が爆発的に増加した。いまや世界はヒトが充満し、個人がどこにでも移動できる状況だ。いかに有意義であろうと人類に新たな進化など起こりようもない。今後もいまのままの姿であり続けるだろう」。

◆予測2: 人類は進化を続ける

 タッターソル氏と反対の立場を取る科学者も存在し、多くの証拠を見出している。

 例えば、先月発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌では、未来の女性は現在より「ずんぐり」体型になるという研究が発表されている。

 論文の著者は、アメリカにあるイェール大学の進化生物学者ステファン・スターンズ氏率いる研究チームだ。同氏らは、排卵特性により、背が低くて太り気味の女性は多くの子を設ける傾向があることを発見した。この身体的特徴が子に受け継がれることを考えれば、人類の自然淘汰は現在も続いていると言えなくもない。

 ニューメキシコ大学の進化心理学者ジェフリー・ミラー氏は、人類のダーウィン的進化はむしろ加速していると考えており、配偶者選択を通じて起きる性淘汰を主原因の一つとして挙げている。「収入面や育児面の成功に必要な精神的特徴の形成は、いまでも配偶者選択が強く影響している」とミラー氏は言う。

「性淘汰の影響は今後ますます強くなる。テクノロジーが進化の度合いを深めるほど、一般知能の高低で個人の経済的・社会的成功が決まるようになるからだ。複雑化したテクノロジーを理解するのは困難だが、それを習得する能力があれば、収入や社会的地位、性的魅力も向上する」。

 将来的には、遺伝子工学に基づく人為淘汰がこの傾向をさらに強める可能性があるとミラー氏は見ている。

◆予測3: 電子的な不老不死を実現する

「トランスヒューマニズム(超人間主義)」は、テクノロジーを駆使して人類の進化をつかさどり、その生物学的限界を超越しようという思想である。『種の起源』で表された古典的な進化は廃れ、未来の人類は“不自然”淘汰で進化する可能性があるというのが基本的な考え方だ。

 オックスフォード大学に設立された「人間性の未来研究所(Future of Humanity Institute)」の所長ニック・ボストロム氏は次のように話す。「クローン技術や遺伝子改造技術、ロボット工学、人工知能、ナノテクノロジーなど、人類の状況を一変させるテクノロジーが著しく進歩する一方で、ダーウィン的進化は時間がかかりすぎる」。

 トランスヒューマニズムでは、超人兵士や新種のアスリート、あるいは不死人類といった壮大な可能性が提示されている。この場合の不死人類とは、原子レベルで脳がスキャンされ、精神の所在がコンピューターに移された人類のことだ。

 ボストロム氏によると、この新人類は永遠の命を手にするだけではない。情報と同じように光速の移動が可能で、精神をロボットに転送すれば実世界を歩き回ることもできる。高度なオペレーティングシステムが土台にあれば思考回路が高速化し、食べる必要がないため食費はゼロになる。

「これが実現すれば、新しいタイプの進化が起きるだろう」と同氏は予言する。

◆予測4: スペース・コロニーで新しい進化が起こる?

 ウィスコンシン大学マディソン校の人類学者ジョン・ホークス氏は、「大規模な隔絶メカニズムが新たに登場しなければ、新しい人類は出現しない。実際、オーストラリアやパプアニューギニアでは一部の種族が最大3万年も隔絶した環境で生きていたのに、人類の種分化は起こらなかった」と指摘する。

 しかし、遠い未来に太陽系外で居住可能な惑星が見つかり、植民が進んで隔絶された環境下で生活するようになれば、人類のニュータイプが出現することも考えられる。ホークス氏も、「はるかかなたの惑星に人類の一部が移住し地球との交流が絶たれれば、種分化も充分にあり得る」と述べている。

James Owen for National Geographic News

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