“ストリートファイターII”と聞いて説明が必要な人は少ないだろう。ストIIは1991年にカプコンから登場した世界初の対戦型格闘ゲーム。
後にテレビゲーム業界においても同ジャンルを築いたパイオニア的作品だ。
1992年に発売された家庭用(スーパーファミコン版)は累計本数630万本を売り上げ、対戦型格闘ゲーム史上1位を記録。その後、派生作品や続編も作られ、シリーズ累計は3,600万本を誇る(2015年6月末現在)!
今回は、そんな日本が生んだ一大デジタルエンターテイメントを振り返ってみよう!

ゲーセンがとにかく熱かった!


1991年のアーケード版が登場した際には、その対戦の面白さからすぐに全国のゲームセンターを埋め尽くした。東京だけだったのか全国的にそうなのかは分からないが、順番待ちのために、筐体(いわゆるゲームマシンのこと)の隅っこには100円玉が山積みになっていた!

その熱狂ぶりはすさまじく、乱入対戦が主流となった92年頃になると、負けた側が“台パン”(筐体を叩くこと)をして相手を睨みつける、という様式美も生まれた。今ではガンダムVSシリーズが“ガンダム動物園”などと呼ばれているが、ゲーセンでのカツアゲや喧嘩が社会問題でもあった当時、動物園なんて生ぬるいものではなかっただろう。波動拳すらまともに出せない小学校低学年だった筆者は、ダルシムのごとく腰を低く落とし、いつもその様子を離れて見ているのが精いっぱいだったが、それでも「いつかは俺もあの舞台に立ちたい」などと若手俳優の様なことを思っていたものだった……

“格ゲー”というジャンルを築いたゲームの新境地


ストIIがブームを作った最大の要因は、格ゲーというジャンルを創り上げた事に他ならない。格ゲーとは、60フレームという1秒を60コマに割った世界の中で、いかに相手の動きを読み、的確な一挙一動を繰り出せるか、という競争である。いわば超高速の将棋や囲碁を指しているといっても過言ではないと筆者は考える。

というのも、選択するキャラクターは外見のほか、その操作性や必殺技などが大きく異なるため、クセを把握して最高のパフォーマンスを出すには、それ相当の努力と鍛錬が必要になる。その過程があるからこそ、プレイ中は、まるで自分自身がストリートファイトしているかのような気持ちでのめり込めるのだ。ストIIは、ゲームをスポーツ(今で言う「e-スポーツ」)に昇華させた作品なのかもしれない。

もちろん、この域に達するのはかなりの経験を積んでからだが、初めてそれに触れる人でもその直感的な操作を通じて「コンピューターとは違う、生身の人間の息づかいを感じる」という面白さはあるはずだ!

ストIIのトリビア・伝説


そんなストIIは、2008年に3つの記録がギネスに登録されている。
(1)ゲーム筐体における最高のセールスを達成した格闘ゲーム
(2)コンボを使用した最初の格闘ゲーム
(3)最もクローンが産み出された格闘ゲーム
これ以外にも、意外と知らない!? ストIIにまつわるトリビアを紹介したい。

<トリビア編>
・初期のリュウとケンは全くの同一性能ではなく、開発上のミスでリュウの方が気絶しやすかったことから「病気持ちのリュウ」と呼ばれていた
・出した技を途中でキャンセルし別の技を繰り出すいわゆる「コンボ」は、はじめはシステムのバグだった
・「モータルコンバット」の登場に危機感を感じて作った、実写の俳優がキャラクターとして動く「ストリートファイター ザ・ムービー」は、はじめ「ストリートファイターIII」として開発されていた
・原案段階のダルシムは、腕が6本あり、象の頭を持つというビックリ人間だった。
なおほぼ原案通りとなったのは春麗のみ
・James Goddard氏による唯一の外国人デザインのキャラであるディージェイは、なんとビリーズブートキャンプで有名なビリー隊長がモデルとのこと

<伝説編>
続いて、今や都市伝説的に語られる、ストIIブーム当時のびっくり話を紹介したい。
・ゲーセンからストIIの筐体が盗まれる事件が発生
・日本各地にストII専門のゲーセンが現れる
・「○丁目の△△使い」「〇〇(地域)最強の△△使い」が全国同時多発的に現れる
・ジャッキーチェンが映画「シティハンター」で春麗のコスプレをする
・ザンギエフ使いは対戦相手に「真剣にやれよ」と煽られる
・そしてその相手を打ち負かすと、周りでどよめきが起きる
・友達のお兄ちゃんがお金貯めて、ついにゲーセンの筐体を買ってくる(筆者だけ?笑)

ちなみに、筆者がアメリカ・ニューヨークでストIIをプレイしていたら、ゲーセンに人だかりが出来て一躍ヒーローになった事がある。ただCPU戦をやっていただけなのに「あいつ、自由に昇竜拳を打てるぞ。マスターオブ昇竜拳だ……!」などと言われて拍手と歓声が起きた。こっぱずかしかったが、同時にこのゲームの凄さを実感した。時期は未定ながら、完全新作となる「ストリートファイター5」の発売を控えた今、あの頃ワイワイ楽しんだ人達は、ぜひこれを機に今一度プレイしてみて欲しい!
(セイヒ)