卵を割ったとき、黄身にからむ白いヒモのようなカラザ。これを簡単に取り除くことができる「クローバースプーン」がヒットしている。
テレビの情報番組で取り上げられたことから火がついたアイデアグッズ。モノ自体も画期的ながら、考案した人物がじつに個性的でメディアに引っ張りだことなっている。
「梅屋敷のエジソン」こと永田栄吉さんは今年86歳。頭の中はつねに発明のアイデアでいっぱいと語る現役の発明家である。今も尽きることのないアイデアは、どのように生まれるのか? エジソンの工房を訪ねた。
ちょっとした不満がアイデアの源
大田区東蒲田の小さな町工場「永祐(ながひろ)製作所」。永田さんは、ここで電子部品を製造しながら数々のユニークな発明品を手がけてきた。聴診器の仕組みを使い電車のなかでも周囲を気にせず会話ができる「仲良しテレホン」、飛んでいるハエを両手で挟むように捕らえる「空中ハエタタキ」、部屋のなかに舞うホコリを可視化できる「ホコリチェッカー」etc……。
これら発明においてアイデアの源となるのは、生活のなかのちょっとした不満だ。日常でぶつかる不便さは永田さんにとっての金脈。そのつど「どうすれば今より便利にできるか」を必死で考え抜く。
「日常のなかで自分が不便だと思ったり、不満に思ったことがすべての発明の根本にある。どうすればその不便さを解消できるのか。そんなことをつねに考えています」
ヒット作「クローバースプーン」も永田さん自身の不満が原点。苦手なカラザを箸でつまんで捨てるのがもどかしく、そのへんのスプーンに四葉形の切れ込みを入れてみたらスルっと取れた。昨年5月に商品化するとカラザの食感が苦手な人に好評を博し、1本680円のスプーンが1万本を売上げた。
酷評にもめげず……86歳で初のヒット
永田さんにとってもっともアイデアが浮かぶ場所やシチュエーションを伺ってみた。
「しいて言えば無心のときでしょうか。5年前まで毎朝5kmのウォーキングが日課だったんですが、無心で歩いているときはとくにいいアイデアが浮かびましたね。当時は2カ月に1個のペースで発明し、発表会に出していましたから」
60歳から80歳にかけて3万km以上を歩き、そこで生まれたアイデアは数知れない。ただ、「クローバースプーン」以前は発明家として鳴かず飛ばず。辛酸もたっぷり味わった。
「たとえば『ホコリチェッカー』を作って発明学会で発表したときも散々に酷評されました。…


