実験線が18.4kmから42.8kmに延伸され、新型車両も導入。
完成すれば、最高時速500キロで東京~名古屋を40分、東京~大阪を67分で結ぶ夢の高速新幹線(それぞれ2027年と45年の開通予定)。実験走行再開が祝賀ムードに包まれるのも当然といえるが、その一方で、実験線の周辺では“水枯れ”という深刻な環境問題が発生している。
水枯れとは文字通り、自然の水源が枯渇してしまうこと。初めて報告されたのは、99年の大月市猿橋町朝日小沢地区。住民の簡易水道の水源である沢が枯れた。
この無生野地区の棚の入沢には、11年まで尺(約30cm)サイズのイワナとヤマメが泳いでいたという。だが、今年5月には乾いた川底の砂を晒(さら)していた。地元住民の有馬孔志さんは「去年なんて、魚の死骸がゴロゴロしていました」とやるせなさそうに語る。
こうした水枯れ問題は、実はリニアに限らず、どんなトンネル工事でも水脈を断ち切れば必ず起きるもの。だが、リニア計画の特殊性は、東京~大阪間約438kmの8割以上でトンネルを掘る。
行政は、こうした実態を把握しているのか。前述の一級河川、天川を管轄する笛吹市建設部土木課は「(報道された以外の場所でも)簡易水道の水源も枯渇しました。個人宅の井戸も干上がったとの電話も数十件ありました」と認めている。しかし、リニア工事による影響については……。
「すべてそうとは断定できません。
水枯れだけでなく、リニア中央新幹線には、周辺地域とのさまざまな問題が懸念されている。トンネル工事で発生する大量の残土、騒音、振動、電磁波。これらは対策次第では克服できる可能性はある。
だが、水枯れは現在進行形。JR東海は各地での住民説明会において「水源を保全する工法を施行する」と説明しているが、すでに発生している以上、「あり得ない話だ」と憤(いきどお)る人は多い。
(取材・撮影/樫田秀樹)
■週刊プレイボーイ38号「リニア新幹線が猛スピードで環境破壊している!?」より