今季最終登板となったのは、9月25日(現地時間)のタンパベイ・レイズ戦。
それから3日後、ジョン・ファレル監督が今季を総括する共同会見に臨み、上原の去就について「年齢にかかわらず活躍している。また試合の最後を任せたい」とコメントした。
これは実質的な“残留要請”とみて間違いないだろう。今季の上原の成績は、6勝5敗26セーブ1ホールド。
今季、レ軍はアメリカン・リーグ東地区最下位に沈んだ。昨季のワールドシリーズ制覇から、まさかの急転落である。
「メジャーでは、優勝戦線から脱落したチームは来季以降に備えて、高額年俸のベテランを放出して、若手の有望株を獲得するなどのトレードを行います。ほかに複数年契約の最終年を迎える選手も、放出要員として挙げられます」(同)
年俸425万ドル(約4億2500万円)・2年契約が満了した上原も、当然放出対象として名前が挙がった。トレード期日の7月末が近づくにつれ、「上原を放出して若手を獲るべきか」といった議論が地元メディアでも展開され、レ軍のベン・チェリントンゼネラルマネージャー(GM)も玉虫色のコメントを繰り返していた。
「上原はリリーバーとしてのスキルも高いので、優勝争いをしている複数球団から打診もありました」(現地特派記者)
最終的に、レ軍は上原を放出しなかったが、これが来季以降の正式な残留交渉を難しくさせた。なぜなら、メジャーリーグには「クオリファイング・オファー」のルールがあるからだ。
クオリファイング・オファーとは、フリーエージェント権(FA)を獲得した選手に対し、在籍チームが再契約を臨む場合、シーズン終了から5日以内に30球団統一年俸での単年契約を提示しなければならない。
ところが、この統一年俸というのが厄介なのである。
「その年のメジャー全選手のうち、年俸上位125人の平均額が統一年俸となります」(米国紙記者)
地元ボストンのスポーツサイト、カムキャスト・スポーツが独自調査したところ、今年度の統一年俸は1500万ドル(約15億円)に達するといい、上原について次のように伝えている。
「1500万ドルはレ軍が支払える金額だ。しかし、上原に対しては払いすぎと思われるかもしれない」
過去にメジャーで年俸1500万ドルを勝ち取ったクローザーは、昨季引退したマリアノ・リベラ(ニューヨーク・ヤンキース)だけだ(2012~13年の2季)。今季のメジャー選手名鑑によると、クローザーの最高額はジョナサン・パペルボン(フィラデルフィア・フィリーズ)の1300万ドル(約13億円)。
「メジャーは30代半ばすぎの選手に対し、シビアなところがあります。日本のように過去の実績を契約更改で加味しません」(前出・現地特派記者)
来季40歳になる上原が、1500万ドルにふさわしいピッチングを続けられるかと聞かれれば、その保証はない。
とはいえ、統一年俸を提示しなければ、上原は他球団との移籍交渉を始めるだろう。上原がFA宣言した後であらためてアタックし、適額で交渉するという裏ワザもあるらしいが、そんなことを上原の代理人が黙って見過ごしはしないだろう。
「シーズン途中で契約更新する方法もありましたが、レ軍経営陣はチーム再建に追われ、上原と交渉するタイミングを逸してしまったのです。
レ軍はクオリファイング・オファーを提示するのだろうか。上原にとって、まさに運命の別れ道だ。確実に計算の立つクローザーは、メジャーリーグでも少ない。ワールドシリーズ終了後、クオリファイング・オファーが提示されれば、上原の雄叫びは日本まで聞こえてきそうだ。
(文=美山和也/スポーツライター)