いま女性活躍を推進する動きが本格化しています。内閣府では、女性の活躍推進に向けた指針を発表し、各企業の取り組み方の情報公開を始めました。

そして時代の流れに呼応するように、世界で活躍できる女性ビジネスリーダーの育成も求められています。

 今回は、日本初の女性リーダーを育成するためのビジネススクール、日本女子経営大学院の役員でもある、マネジメントサービスセンター・コンサルタントの今井恵利子氏に、女性活躍の現状と方向性についてお聞きしてみました。

●女性管理職が少ない日本社会

--女性の活躍を推進する動きが活発化している現状を、どのようにお考えですか?

今井恵利子氏(以下、今井) ようやく日本でも女性が活躍可能な土壌ができつつあると感じています。女性は家庭に入って家族を支えて家を守るものという価値観が強い日本ですが、欧米諸国でも、女性が家庭に入ることを美徳とする考え方がいまだに残っています。

--欧米では、女性の社会進出が認められているイメージがありますが。

今井 それは大きな誤解といえます。
就業者比率でいえば、欧米も日本も大きな差はありません。グローバル企業を例にとっても、2000年頃の女性管理職比率は10%未満の企業も珍しくありませんでした。欧米で女性管理職が増えてきたのは、ここ10年くらいです。それに比べて日本では女性管理職が増えていないことが問題視されているのです。

--欧米では、成果主義が女性社員に対しても浸透してきているということでしょうか?

今井 欧米は成果主義が浸透していて、正当に評価されると思っている人が多いように感じますが、それも誤解です。確かに日本のような年功序列的考え方はありませんが、それだけで女性管理職や女性役員が増えるわけではありません。


 欧米では、女性リーダーを育成するためのプログラムが充実しているのです。日本には、そのようなプログラムが欠如していました。女性リーダーを育成するためには、個人の資質に任せるのではなく、人材開発、登用、評価制度などを含めたトータルな人材マネジメントの仕組みを変えていくことが大切です。

--日本の女性は出世意欲が低いという指摘もあります。

今井 残念なことに、優秀であるにもかかわらず結婚や出産を理由に昇進機会を見送るなど、自分でブレーキをかけている女性社員が多いという問題点はあります。当社の調査でも、女性社員の昇進昇格に対して否定的な回答をする人が圧倒的に多かった時期もありました。


 一方、欧米で女性管理職が多いのには理由があります。人事権を行使できる立場のリーダーに女性活用の意識が根付いていることや、女性が管理職に就いても不都合がないようなシステムが用意されていることです。つまり、社内に女性管理職を登用するための仕組みが構築されているのです。この点に関して、日本は大きく後れを取っています。

●女性が活躍できる仕組みづくり

--日本は、今後どのような取り組みをしていくべきでしょうか?

今井 産前産後休業・育児休業などの福利厚生の充実も大切ですが、昇進に対する女性の意識改革が欠かせないと思います。女性の「管理職になりたい」という主体的な意欲を引き出すためには、異業種の女性社員と交流しながら学び合う活動がとても有効だと考えます。
その点で、来年1月に開校する日本女子経営大学院は、女性リーダーを育成する環境が整っています。

--具体的には、どのようにして女性リーダーを育成するのでしょうか?

今井 学習効果を高めると同時に方向性を明確化するために、ロールモデルとなるような経験豊富な女性指導者(メンター)からのサポートが受けられます。当社の調査では、組織の中で女性が管理職やリーダーとして第一線で活躍していくためには、その成長を熱心にサポートし、見守ってくれる、よき相談相手としてのメンターの存在が重要であり、大きな意義をもっているという結果が出ています。

 また、リーダーとして行動・実践するために必要なことは何かを考えさせるためのプログラムや、より実践に近いケーススタディや演習等のカリキュラムを用意しています。

--ありがとうございました。

 今後、女性管理職が増加していくのに伴い、各企業には女性が働きやすい職場をつくることが、さらに強く求められることになるでしょう。
女性が活躍することによって、日本経済が活性化してほしいと思います。
(文=尾藤克之/経営コンサルタント)