近年では投票率の低下が叫ばれて久しいですが、せっかく投票したのに無効票となる投票も5%ほど存在するそうです。
最近では誰も支持をしない表明として白票を投じるという動きも広がっているようですが、単純にミスして無効票となってしまうケースもあるでしょう。

このような公職の選挙について定めているのが言わずと知れた公職選挙法で、その第68条において、衆議院(比例代表選出)議員の選挙、参議院(比例代表選出)議員の選挙、それ以外の選挙に分けて、どのような場合に投票が無効となるのかを定めています。
今回は、比例代表選出議員ではない一般的な公職の選挙において、投票が無効となる主な場合を解説してみます。

■無効になる5つのケース
1.所定の投票用紙を用いない投票
投票用紙は選挙管理委員会の側で用意するものですから、通常はあり得ないと考えられますが、種類の異なる選挙が同時に行われる場合には、それぞれで異なる投票用紙が用意されている関係で、係員が間違った投票用紙を渡してしまい、結果的に無効になったという例があるようです。

2.複数名の候補者の氏名を記載した投票
1つの投票用紙に2人以上の候補者の氏名を記載した場合です。どちらの候補者に投票したのか分かりませんから、これも無効になるのは当然です。

3.候補者にいない氏名への投票
候補者の氏名とは全く関係のない氏名を記載した場合も無効となります。
これも当然のことといえるのですが、特定の候補者の名前を記載するつもりが、間違って記載してしまった場合には、直ちに無効とはなりません。
間違った記載でも、どの候補者に対して投票する意思であったのかを明白に特定し得るものであれば、有効と判断されることになります。
例えば、候補者山田太郎と記載すべきところを誤って山本太郎と記載したものと認められる場合には、有効とされます。
しかしながら、候補者山田太郎の氏名を誤って同人の実父山田一郎の氏名を記載してしまった場合において、山田一郎も政治家であったような場合には、山田一郎に対して投票した可能性があるものとして、無効となる可能性が高いです。

4.氏名以外の情報を記載した投票
候補者の氏名だけでなく、それ以外のこと(他事)を記載した場合も無効になります。ただし、「他事」といっても、それが候補者の職業、身分、住所又は敬称の類であった場合には、無効とはされません。

候補者である山田太郎さんに投票しようと思い、「山田太郎さん」と記載するだけでは無効とならないのですが、「山田太郎さんへ」と記載してしまうと無効になってしまうのです。このあたりになってくると、少々厳しいという感想を持ちます。

5.その他のケース
そのほか、候補者の氏名を自書しない投票も、基本的には無効とされています。ゴム印を押捺して投票しても無効となるのです。

■選挙は民意を反映させる絶好の機会
投票という行為で選挙権を行使することは、民意を政治に反映させる絶好の機会となります。真の民主主義を実現するためにも、くれぐれも無効票となってしまわないように注意しなければなりません。


*著者:弁護士 田沢 剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所。8年間の裁判官勤務を経たのち、弁護士へ転身。「司法のチカラを皆様のチカラに」をモットーに、身近に感じてもらえる事務所を目指している。)