■『土井家の「一生もん」2品献立』(著:土井善晴)
◎古川ゆか 生活文化第一出版部 40代 女
□台所の空気と時間が育むもの
私は、台所という場所に格別の愛着があるようだ。
子どもの頃は、台所の水屋の前が指定席で、母や祖母が料理をしている姿をよく眺めていました。
特に遊び相手をしてもらえなくても、台所からいろんな音がしたり、いい匂いが漂ってきて、話しかければいつでも手を止めて受けとめてもらえる安心感のある空気のなかで過ごしていた子ども時代。最近、とみにその頃のことが思い出されてなりません。
そして、編集者となった今、料理本の編集に携わっており、撮影の日は1日中、料理家の先生が料理を作るのをそばで見ることができる(&食べることができる)僥倖!
今回、「この1冊!」をどれにしようかと自宅の書棚を眺めてみて、自分の蔵書で最も多く(なんと8割近く!)を占めているのが料理書であることに気づき、料理本を選びました。ご紹介するのは、最も尊敬する料理家の1人、土井善晴先生の『土井家の「一生もん」2品献立』です。
10年以上前のこと、土井先生に雑誌の企画をお願いし、初めて料理をいただいたときの感動はいまだに忘れられません! ふわ~っと体じゅうに青空が広がるようなきれいな味! 心身が満たされ、その後しばらく幸福感が持続するほどでした。
本は、ときにその人の人生を変えてしまう力を持っていますが、私はこの本で、“家庭料理”のすばらしさに開眼。日常、料理に向かう姿勢が一変してしまった。そんな、エポックな料理本なのです。
これから一人暮らしを始める人や、結婚したばかりの人、そして長年料理を作ってきた人にも、ぜひ手にとってほしい1冊。
子どものころ、なぜあんなにも台所にいることが心地がよかったのか……。家庭料理は紛れもなく、家族の心身を養うものですが、食べる人を思いながら料理を作る時間のなかで生まれる母性的な気配やぬくもり自体が、人の芯を満たし、生きる力のベースようなものを作ってくれる、そんなことを無意識に感じ取っていたからではないか、と最近思うのです。
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- 講談社創業100周年記念「この1冊!」を読む
■執筆した社員
◎講談社社員 人生の1冊
古川ゆか【生活文化第一出版部 40代 女】
※所属部署・年代は執筆当時のものです
■今回ご紹介した本
◎土井家の「一生もん」2品献立
発売から10年以上たっても、売れ続けている家庭料理の決定版!
生の野菜は手でバリバリッとちぎると、お料理に表情が出ます(くずし卵のサラダ)/肉じゃがはふたをして、やさしい火加減で「蒸し煮」しましょう(肉じゃが)/“煮立ったところをめがけて”が卵と次の極意(親子丼) ほか
そろそろ、「家庭料理のベーシック」を手に入れよう!
- 著:土井善晴
- ISBN:9784062716338
- 製品ページ:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062716338