隠れアスペルガーも含めたアスペルガーの人の、約8割は男性です。女性より男性のほうが多いのですが、恋愛に関しては、ある意味、女性のアスペルガーのほうが深刻と言えます。
アスペルガーの人は、雑談ができず、他人の気持ちを推し量ることが苦手です。そのため、デートをしても会話がはずまなくて気まずい思いをします。
複数の物事を同時進行で行うのも苦手です。デート中、次の行き先を考えているときに話しかけられるとパニックになるし、歩きながら会話をすることさえ、満足にできません。
また、自分が興味のあることにはとことん熱中するけれど、それ以外のことには全く興味を持てないため、デート中につまらなそうな態度をとってしまうことも多々あります。こんな調子なので、アスペルガーの人は、デートの相手を不愉快な気持ちにさせてしまうことが多いのです。
すでにお気づきかもしれませんが、こういったアスペルガーの特徴は、「普通の男性」にも割とよく見られるものです。
これは、男脳と女脳の違いに原因があります。女性の脳は、男性に比べて脳
梁(左右の大脳をつなぐ線維の束)が太いため、脳内を行きかう情報の量が多く、スピードが早いのです。普通、女性は男性より細かいことによく気がつくし、会話をしていても次々と内容が移り変わります。電話をしながら料理をして、ついでに片付けをするなんてことも可能です。
ところが、アスペルガーの女性はそうはいきません。会話の内容がコロコロ変わるガールズトークにはついていけないし、他人の気持ちがあまりよくわからないので、基本的に気が利きません。同時並行処理も苦手だから、料理や片付けも得意ではありません。さらに言えば、鉄道や昆虫採集、工場見学といった男性的でマニアックな趣味に没頭する傾向も見られます。そんな「男っぽい」性質を持っているため、「アスペルガー女子」は女友達より男友達のほうが話しやすく、男友達とばかりつるんでいることが多いのです。
要するに、アスペルガーというのは、ある種の「男らしさ」が強調された存在なのです。
一時期、男は話を聞けないとか、女は地図を読めないとか、男脳・女脳という分類が流行しましたよね。その分類で言う「男脳」の特徴をずっと極端にしたのがアスペルガーだと理解しておけば、ほぼ間違いありません。「女らしく」って大変...。
もちろん、男女は平等であるべきですが、世間では、まだまだ女性のほうが「細やかな気配りができて当たり前」「家事ができて当たり前」といった社会的な刷り込みに強く縛られています。
性だったら、気が利かなくても、ガサツで家事が苦手でも、「まあ、男ってそういうものだから」と許されますよね。ところが、女性の場合は「女らしくない」「だらしない」と言われてしまうのです。
また、人はどうしても自分にはない要素を相手に求めるものです。男性から見れば、自分にはない気配りや癒しといった「女らしさ」を求めたい。なので、ズバズバと率直な物言いをする女性、ちょっとガサツでおおざっぱな女性、鉄道や昆虫の話で異様に盛り上がる女性とは、友達にはなれても「彼女にはちょっと……」となってしまうのです。
ただし、女性は社会的に「女らしさ」を求められるだけに、表面的には普通の女の子らしく振る舞う傾向があります。子どもの頃から「女の子は普通にしていなさい」「おとなしくしていなさい」と言われてきたので、女らしく演じることが習慣となっているのです。特に症状の軽い隠れアスペルガーの女性であれば、アスペルガーの症状を隠すことはそれほど難しいことではありません。
一見「普通の女子」っぽい隠れアスペルガー女子は、普通にモテます。しかし、付き合っているうちに内面の「男っぽさ」がバレてしまい、男性が離れていってしまうことが多いのです。残念ながら、アスペルガーの女性は、恋愛においては不利だと言えるでしょう。
〈『隠れアスペルガーでもできる幸せな恋愛』より構成〉