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戦時中に起きた実話怪談【背中の声】

2017年9月30日 22時05分 (2017年10月1日 22時00分 更新)

 とあるご老人(仮に沢山さんとしておく)から話を聞いた。

 沢山さんは、満州事変の頃から終戦まで闘い続けた歴戦の職業軍人で、終戦の頃は南方で戦っていた。

 「わしの部隊はな、上陸してきた敵に果敢に突撃していったんだが、敵の集中砲火の前に全滅してしまった。仲間の肉片が飛び散る中でな、わしは気を失ってしまった」

 沢山さんが意識を取り戻した頃には、夜になっており、周りは味方の死体でうめつくされていた。助かった、今なら逃げられる。ジャングルを越えてとなりの入江に行こう。あそこにはまだ味方がいるはずだ。沢山さんは闇に紛れ、ジャングルに逃げ込んだ。

 「おーい、貴様は、日本人だろう」

 蚊の鳴くような小さな声が聞こえた。一瞬身構えたが、周りには誰もいない。

 「ここにいるよ。どうやら足をやられた。動けないんだ」

 目を凝らしてみると、闇の中で日本兵が横たわっている。それは、戦友の高橋であった。

 「おい、沢山! 自分はもう歩けない。せめて遺品だけ国の家族に持っていってくれんか」

 高橋は遺品を沢山さんに預けようとした。

 「何を言うんだ。貴様を背負って友軍に合流してみせる」

 しかし、磁石すら持っていない彼は、ジャングルの中を何度も迷い続けた。

 「おい沢山よ、さっきと同じ場所を通っているぞ、俺は背負われながら通る道筋の枝を折ってきたんだが、どうも同じ道を何度も歩いている」

 背負われた高橋が指摘した。

 「そうか、ありがとう。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

コメント 1

  • 匿名さん 通報

    泣ける話だ。

    0
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